2013年10月29日火曜日

新型スカイラインはトヨタ86よりもスポーティだ。

  日産にとってなかなかイラッとくる新型車がトヨタ86じゃないでしょうか? それほど目くじらを立てるということはないようですが、日産がGT-Rで必死に取り戻したといっていい「国産スポーツカー」人気再燃の絶好機を、ライバルのトヨタに全部「オイシイ所」を持って行かれてしまったわけですから・・・。

  日産がGT-Rの最初の企画の段階で世界の富裕層をメインの商売としたことは明らかです。けれどもあらゆる手段を講じて、価格の上昇を抑えることで、中産階級にも十分に手の届くクルマという日産の説明も十分に納得できます。おそらく世界でGT-Rに手が届く人は数億人の規模に達していることでしょう。フェラーリと比べれば100~1000倍は多い数だと思われます。世界のそれだけの人々に対して「最高」のマシンを所有する機会を与えたことは、他のどんなブランドも成し遂げていない「金字塔」と言えます。

  世界中のクルマファンに大きなインパクトをもたらしたと同時に、特に日本人にスポーツカーのみならずクルマ全般への興味を再燃させたのは間違いないでしょう。そんな崇高な理念で「日本のクルマ作り」を活性化させようとしたGT-Rに対して、トヨタがそれを受けて開発したスポーツカー「86」はGT-Rとはまったく逆のアプローチだったにもかかわらず、結果的にGT-Rが掘り起こした「ニーズを」見事に刈り取っていきました。

  トヨタがどんなクルマを作ろうとも日産が知ったことでしょうが、トヨタが名乗る「スポーツ」の言葉の軽さと、日産が「スポーツ」に込めるストイック過ぎる想いはあまりにも対象的です。「相対的」なトヨタと「絶対的」な日産のクルマ作りの価値基準を比べてもあまり意味はないですが、そういう前提を理解することなく、場当たり的な評論がカーメディアに蔓延っていてムカつくことがあります。もっともっと開発者の意図を汲んでほしいものです。

  トヨタは社内に「世界一厳格」な乗用車の設計に関する規定があり、その中で「相対的」にパワーウエイトレイシオに優れるモデルが「スポーツ」と規定しているようです。一方で日産は「絶対的」な運動性能こそがスポーツの原点と考えているようで、常に「クラス最強」を意識した設計をします。運動性能で世界の頂点に立つためにポルシェのスポーツカー(911ターボとケイマン)をベンチマークして、GT-Rと現行Zを開発しています。

  スカイラインにしても6気筒NAの究極のフィールとパワーを最大の売りにしていて、さらに4WSを装備するなど、セダンとしては異例のだけれども「額面通り」の高性能モデルになっています。この「絶対的」運動性能の前では、トヨタの専用設計のスポーツカーが「スポーツ」と名乗るのが憚れるほどです。もちろんトヨタにはトヨタの考えが、日産には日産の考えがあって、どちらも「秩序」に基づいています。

  同じ「秩序」だったり「哲学」を他の輸入車メーカーから少しでも感じることができるでしょうか? ポルシェ以外の輸入車メーカーに対してある種の「嫌悪感」を抱き、思わず批判したくなってしまう最大のポイントがこの「欠如」です。評論家は挙って日本メーカーを叩きますが、どう考えても「クズ」なのはBMWやメルセデスだろうと思うのですが・・・。

まあどう考えても
GT86>>>>>>>BMW Z4=メルセデスSLK
スカイライン>>>>>>>BMW3=メルセデスC
なのです・・・。

(BMWやメルセデスがどう「クズ」なのかは別の機会に・・・)



2013年10月26日土曜日

「ハイブリッドセダン」というプレッシャー

  ホリ◯モンが逮捕されて以降からでしょうか、日本全体に「負」の空気が満ちあふれ、社会で起こっている事に全く関心が持てなくなりました。テレビも新聞も見るのがとても苦痛で、政治家などちょっと有名になった人を、浅ましいメディアが「小馬鹿」にしたような表現で報道するのを見てもまったく笑えませんでした。マツコデ◯ックスとか宮◯哲弥とか池◯彰とか・・・何が面白いんだか全くわかりません。30分見ていて何一つ心に残る発言なんて無いんですよね。

  クイズ番組とか見続けてたら本当にバカになると思いますよ。やく◯つる程度の知識頭って言ったら失礼ですが、そんなサラリーマンがいくらいても会社の業績は上がらないし、社会は良くならないはずです。全員がスティーブ=ジョブスや水野和敏氏のようなスピリッチュアルなイノベーター&スーパーエクゼクティブになればいいとは思いませんが、そういうクリエイティブな世界と今の日本の現状があまりにもかけ離れている気がするのです。

  いま生きてて楽しいなと心の底から思える瞬間は、ドライブに出掛けたり、クルマのこと考えたり・・・それくらいなんですよね。職場の何人かの同僚、美容師、MAZDAの担当者、いつも行くGSの気さくな店員さんといった顔なじみと話をするのはハッピーですね。たまには面白い人に出会ったり、面白い本を見つけたりすることもありますが、それ以外は正直言って知らない人と関わるのは面倒だし、時間のムダだなと思います。

  まあクルマが無かったら人生相当につまらないなというのが実感です。けど日本政府は金持ち以外はエコカーに乗れという方針を持っているようですね。消費税はある程度見通しがありますが、自動車税やガソリン税に道路インフラ使用料も含めて、クルマの存在の根幹の部分を、見るだけで吐き気がしそうな政治家や官僚のさじ加減で決まっていくのには、つくづく嫌気がさします。

  10年後のガソリンエンジン車の税金がどうなっているかなんて全く解らないのに、6.2Lのシボレーカマロが500万円は安いななんて思えないですよね。ガソリン価格も300円を超えているかもしれません。とりあえずエコカー以外は手が出しにくいと感じる空気感が息苦しいです。エコカーは徹底的に減税しますけど、高級車は増税しますっていう方針は決まっているそうですが、今後売れるのはほとんどがエコカーなんだから、高級車はどれだけ増税されても追いつかないのでは?なんて思ってしまいます。

  レクサスRC-Fが5LのV8で登場しても、自動車税と保険の大幅値上げで合わせて年間100万円超えてしまっては全然楽しくないです。それじゃあRC350Fスポなら・・・こちらも年間50万円以上かかりそうですし、これに150円のガソリンがさらに値上がりして200円超えたら、よっぽどの金持ちじゃないと楽しくドライブできないクルマになってしまうでしょう。

  こんな世の中で若い人達が頑張って仕事しようと思わないですよね・・・。頑張って起業してもちょっと目立つと、クイズ番組知能の税務署や検察がイチャモンつけてきて、ホリ◯モンみたいに捕まってしまいます。なんせ知能がクイズ番組レベルですから、自分達がやっている愚かなことの善悪の区別なんてなく、気に入らないヤツがいたら「死刑でいいよ」みたいな感覚なんでしょうね・・・。やたらめったら増税してその使い道はというと、「社会保障(のための人件費)」とやらに使われるわけです。90兆やら100兆やらの予算の内訳は半分以上が「人件費」です。亡国の「クイズ番組知能」どもに使われる人件費です・・・。


  
↓こういう本が売れるのは、たぶん私と同じようなことを感じている人が多いからだと思います。現代日本人にとっての「解毒剤」ですね・・・
  

2013年10月14日月曜日

クルマにコダワル人々の必死な言い分・・・

  「クルマなんてどれでも一緒だろ」って思っている人に、自分のクルマ選びがいかに的を得ているかを説明するのはそんなに難しくないのですが、「大きいクルマに乗って見栄張りたいだけだろ・・・」って思ってそうな人を納得させるのはちょっと厄介ですよね。まあ住んでいる地域によって感覚はだいぶ違うとは思いますが・・・。

  なんでアテンザに乗っているの?って訊かれたら細かいごちゃごちゃとしたことを省くと、結局のところ「フラッグシップ車だから」が答えです。今後もフラッグシップ車しか買わないつもりです。現状での選択肢は実質的にアテンザ・レガシィ・スカイライン・レジェンド(未発売)の4台だけです(1stカーは絶対に新車です)。まあそれだけあればいいと思います。あれこれ悩むのも面倒ですし。よってレクサスへ行くときはLSを買うときで、メルセデスへ行くときはSクラスを買えるようになった時です。

  なんでフラッグシップ車かと言うと、単純に「気分がいいから」です。マツダのディーラーでもサービスの質が違います。電話で「オイル交換の予約を取りたいのですが・・・」と訊くと、最初は面倒くさそうに対応しますが、「おクルマはアテンザですね」のあとはテンションがやや上がって「いつでもOKですよ!」みたいな感じになります。マツダですらこれですから、他のディーラーは推して知るべしです。なんで客なのに嫌な想いをしなきゃいけないのか?ってのは極々当たり前の言い分です。結局、世の中のあらゆる会社が提供するサービスなんてのは、「どれだけ気分がいいか」が全てであって、そうじゃなければ利用しないのが基本だと思います。

    BMWのディーラーが最低だとか、レクサスが最低だとか良くネットで見かけますが、失礼を承知で言わせてもらうと、1や3、CTやHSを買おうと思った段階で「ブランド詐欺」に引っかかっています(みなさん最後には自分=「カモ」だと気づくようですが・・・)。彼らは最終的には7やLSを買わない人間を徹底的に見下してきます。これは高額商品の営業マンをやった経験がある人にとっては常識です。1000万円のクルマを買わせるにはマジックが必要なのです(これが直感的に解らない人には営業はできません)。よっぽどの金持ち相手で無い限り、徹底的に追い込まないとあんなものは売れません。つまりフラッグシップを買わない限り、ディーラーとの付き合いは苦痛になることが多いです。

  フラッグシップといってもレクサス以外の国産メーカーならば、それほど高額でもなく、付け加えるならば他のクルマと比べて価格差が少ない割に満足度は非常に高くなるように作られています。これも商売のイロハで、「上」・「中」・「下」の三段階で商品があったら、たいていは消費者に解らないように、「中」の利益率が高くなるように設定されています。よって「上」のほうが「中」よりお得だと言えます。「上」がどれほどの満足感があるかはその商材によっても違うでしょうが、クルマに関して言えば絶対的に「上」はお得です。実際にレガシィやスカイラインってほとんど欠点らしい欠点がない素晴らしいクルマなんです。オーナーでこのクルマを悪く言う人はとても少ないです。

  「最高に気分がいい」+「最高のクルマ」がフラッグシップです。東京に住んでいてクルマなんて無くても全然困らない生活をしているのもありますが、「気分が良くない」「最高でないクルマ」なんて絶対に要らないしお金と時間をムダにするだけとすら思います。クルマなんてなんでもいいと言って軽自動車に乗る人の気持ちはまるで理解できません。あんなクルマに150万円の価値があるのか!?
 
  私にとってクルマの主な用途は週末にドライブに行くくらいです(とても重要な「用途」ですが・・・)。せっかくの休みに片道3時間くらいかけて出掛けるわけです。往復6時間ものドライブの間、車内で過ごさなくてはいけません。もし車内が狭くてオーディオも騒音に掻き消されてしまうような環境だったら? 気分転換どころか逆にストレスが溜まってしまいます。 一般にフラッグシップ車は居住性には最大限の配慮がなされています。アクセラやインプレッサより50万円ほど高いだけで、アテンザやレガシィの遮音性はまったく別次元です。

  さらにドライブには事故のリスクが少なからずあります。小さい2BOXカーで、高速道路で事故ったら即死するようなクルマに大切な人を乗せてドライブしたいと思いますか?なぜフラッグシップ車は全て3BOXなのか?当たり前のことですが、それは前後にクラッシャブルゾーンを設ける事で乗員の生存率を上げるためです。日本メーカーのフラッグシップ車は衝突安全基準において世界の「テッペン」です。もちろんブレーキやコーナー安定性においても、ドイツ車に一切負けていません。BMWやメルセデスのどのクルマを持ってきても、アテンザ・レガシィ・スカイラインと「ゴッツン」すれば、グチャグチャになります。それでも日本の軽やコンパクトカーに比べれば断然にマシですが・・・。

  VWにゴルフという快適性を謳った「ゴキゲン」なクルマがあります。実際は全然「ゴキゲン」じゃないです。とくにGTIとか言うスポーツカーを気取ったグレードは最低です。後ろから追突されれば無事じゃ済まないし、高出力モデルなのに日本向けノーマル仕様と変わらない貧弱なブレーキしか備えていません。制動距離もライバル車と比べて最低の水準です。こんなクルマをデートカーにしているヤツは「最低」だと思います。


  そんな訳で、一人では絶対にドライブに行かない私にとっては、同乗者のことを考えると、国産フラッグシップのセダンしか選択肢になりません。みなさんにも是非オススメしたいと思います。こんな最高のドライブカーであるはずなのに、昨日のドライブでは旧型のレガシィとアテンザしか見かけませんでした。現行のレガシィやアテンザは日本を走るGTカーとしては、少々サイズが大きくなり過ぎてしまったという意見もあるようです。しかしマツダ・スバル・日産の世界最高レベルのハンドリングを持ってすれば、「通行注意」の林道だって余裕で走れますよ。


関連記事
「アテンザとBMW3シリーズ〜彼と彼女のクルマ選び・その1」
「アテンザの社会的機能性・その1」

2013年10月11日金曜日

カムリHVのMCキャンペーンが・・・

  とりあえずウケればなんでもいい!全てのメディアコンテンツとコラボしてでもイメージを叩き直せ!ということなのでしょうか? 大前研一が「末期企業的な症状」とか言っていた日経新聞朝刊の全面広告で「島耕作」とコラボを敢行したカムリHVが出ていました。去年の86のキャンペーンで味をしめたトヨタが再び「中高年をその気にさせる」戦略と採ってきたようです。

  先日のSAIのMCも同じような戦略で「モテオヤジ」のクルマとしてさかんにアピールがされていましたが、今度は「ジェントルマン・クラブ」だそうです・・・。一昨年に登場したカムリHVはなかなか話題を呼びました。ハイブリッドのイメージを変えた歴史的名車として記憶されるでしょうが、かなり多くの良識的な方々が買いに走ったおかげで、バックオーダーが相当に発生しトヨタも嬉しい悲鳴だったとか。ただここにきて悲鳴を上げているのは、デビュー当時にこのクルマのポテンシャルを信じた買った人々ではないでしょうか?「なんだよ・・・ジェントルマン・クラブって・・・。そんなクラブに入った覚えはね〜ぞ!」ってぼやきたくなるのでは。

  まあ他人事ではありますが、これは極めて深刻な背信行為です。レクサスISやマツダアテンザを購入して乗っていたら突然にポケモンとコラボし始めたらどうしますか? 世間から「ポケモンセダン」とあだ名され、中古車価格も無惨に暴落して、売るに売れずに10年もの間、周囲の嘲笑を受けながら乗り続けるのは辛いものがあります。トヨタがポケモンはダメだけど島耕作はOKだという感覚なのだとするなら、もうこのメーカーに一流のクルマのコンセプトなんて望むべくもありませんし、語ってほしくないですね・・・。

  本物のジェントルマンならトヨタに乗らないだろ!って野暮なことを言うつもりはないですが、リチャード=ギアとカムリHVがそんなにも易々と繋がってしまうものでしょうか。まったく方向性が違うとも言いきれないとは言え、そういう無理矢理なイメージを押し付けるのはまったくもって蛇足だと思います。そんなことを続けてもブランドイメージの向上どころか悪化する一方だと思います。現代人てトヨタにとってそんなにバカに見えるのでしょうか? それはともかく「86」「SAI」「カムリHV」はトヨタが余計なことをやらなければもっと評価できるクルマなのですが・・・。


 

2013年10月9日水曜日

つまらないD/EセグセダンがCセグに負ける日

  同じブランド内での競争で一番多いのが中型車のD/EセグとCセグの争いだと思います。スバルのレガシィとインプレッサ、マツダのアテンザとアクセラ、BMWの3と1、メルセデスのCLAとAさらに番外編としてトヨタのSAIとプリウスあるいはカムリとオーリスといったところでしょうか。価格面で有利なCセグに対し、D/Eセグがどれだけ魅力で上回れるかという「綱引き」なのですが、最近では競争が激化しているCセグの方が優勢というケースが多くなっています。

  D/Eセグが威厳を示せているのがスバルのレガシィくらいであとは、Cセグの方が走りも良くて・・・なんていう状況に陥っているようです。アテンザはとりあえずテコ入れを待たないとアクセラには対抗できない!とは言い過ぎかもしれませんが、価格差はわずかにもかかわらず、軽量な1.5Lと楽しみなHVを持つアクセラに現状では大きなアドバンテージがあります。D/Eセグの中ではひと際光る存在感を持っていたはずのアテンザが、Cセグのアクセラに歯が立たないとなると、いよいよD/Eセグって何なの?という気もしてしまいます。

  「ラグジュアリーでない、走れない、古くさい」こそがD/Eセグだと言われてしまったら否定できないですね。「コストを掛けないで作る一番大きいクルマ」というのも当たっていると思います。ゆえにマツダ、スバル、VWといった大衆ブランドはこれより大きいクルマを作らないのでしょう。こんなクルマは一度地獄に堕ちろ!

  そんな深刻な状況に陥っているD/Eセグの中で「ラグジュアリーで、走れて、新しい」という異端的な存在と言えるのがレクサスIS350じゃないかと思うのですが、乗り出しで600万円を超える価格設定からしてそもそもこのクラスの「異端」ではあります。もしアテンザもレガシィも600万円という価格が許されるなら、どれほど進化できるのか?という興味はありますが、おそらく実現はしないでしょう。

  一方でCセグはというと、「宣伝費をかけずに売ることができる一番小さいクルマ」と言えます。メルセデスやBMWなどのプレミアムブランドが参入したことで、クルマの作りの良さが厳しく見られるようになりました。世界市場で流通するCセグを比較した特集などを見ると、メルセデスが一番騒音が酷いという結果が出たりしています。それでも各社アイドリングで60デシベル前半に収まっていて、これはクラウンとほぼ同水準です。また各ブランドはできるだけ性能に影響しないように、上手にコスト削減を図っている様子が伺えます。

  FF車はD/Eセグになると旋回半径が大きくなるなどのデメリットが目立ちますが、Cセグでは大勢に影響はなく、ハンドリングも同等に作り込めば、Cセグの方が有利になります。結局のところD/Eセグがはっきりと有利な点は、「キャビン容積が大きい、サイドのデザインが美しい、直進安定性が高い」の3点くらいになってしまいます。この中でさらなる付加価値が出せるとすれば、サイドデザインかな?という気がします。ショートストロークボクサー4気筒にDITターボの高性能ユニットとともにハイレベルなハンドリングとブレーキを備えるレガシィに抜群のサイドデザインが加われば、とても良いクルマになりそうではありますが・・・。

  
   ↓ゴルフ7の長所は「静粛性」で短所は「ブレーキ」だそうです。
  

2013年10月3日木曜日

これからのセダンは「普通」と「高級」の2パターン

  世界のセダン、と言っても日米独韓の4カ国のメーカーが製造するセダンですが、にあった「暗黙」の基準が完全に変わってしまったようです。以前はメルセデスが打ち立てたDセグ/Eセグ/Fセグの3グレード体制が主流でしたが、欧州と日本でのセダン人気の後退によりDセグの販売が世界的に低迷した結果、北米向けに新たに開発されたDとEの中間のような「DEセグ」とラグジュアリーセダンとしての「Fセグ」の2グレードに変わりつつあります。

  簡単に言うと「DEセグ」が普通のセダンで、「Fセグ」が高級なセダンです。普通のセダンといっても乗用車としては十分に高級な部類に入ります。イメージとしてはBMW5やメルセデスEと比較対象になるようなクルマです。最近ではカムリHVやアコードHV、アテンザなども十分にこのクラスで戦えるだけの「重厚感」をテーマに開発が行われていて、以前は「プレミアム」と「大衆」を隔てていた垣根がなくなりました。

  レクサスISやインフィニティQ50(スカイライン)など、上のクラス(GSやフーガ)と共通のプラットホームなので、クルマの性格が多少変わる程度で多くの機能を共用しています。GSとISの違いは細かいところを見ればいろいろあるのですが、根本的なものとしてはハイブリッドモデルのシステムくらいじゃないでしょうか。もはやユーザーの好みの問題です。ちょっと厳しい言い方をすると、GSに「特別な高級感」はなく、ISに「スポーツの要素」はないです。どちらも「普通のセダン」の範疇を出ていません。

  高級なセダンは一般の感覚からいうと「超高級」と言える1000万円クラスのセダンです。レクサスLS、Sクラス、7シリーズ、A8、パナメーラ、クワトロポルテ、ジャガーXJといったところです。一般的にV8エンジンを載せていそうなクラスなのですが、全グレードがV8という格式を保っているのは、意外なことに欧州車にはなく、レクサスLSのみです。最近ではV6ターボが多くなっていて、このクラスもいつまで「特別な地位」を保つことができるかは不透明です。

  日本メーカーのセダンは、生き残りを懸けての大きな動きを世界に先駆けて見せています。アコードとアテンザが北米サイズになり、国内専用モデルであるはずのクラウンも釣られて大型化しました。そして今年新たにスカイラインも大型化するようで、実質的にフーガに近いクルマになるようです。レガシィも来年のFMCで晴れてDEセグメントの仲間入りをする見通しです。ドイツメーカーの動きはやや不透明です。Eセグに関してはサイズは同じかやや小さくなる傾向があり、Dセグ(3シリーズ・Cクラス)は大型化しているので、今後3と5あるいはCとEはどのように差別化が図られるのか、あるいは統合されるのかはまだ予想が付きません。

  「普通のセダン」へと収束する動きは、やや思い込みもあるかもしれませんが、一般的に動きがモッサリしていて、ハンドリングはやや緩くなる傾向にあります。セダンの皮を被ったミニバンみたいな冴えないドライブフィールに堕することが、「普通のセダン」の宿命と思いたくはありませんが、ライバルとのコスト競争の中で、特に「運転補助システム」の開発に力が入れられてしまっていて、足回りやハンドリングの開発が不十分と評されるクルマが多くなっている印象です。新型アテンザも新型メルセデスEクラスもこの点が特に指摘されています。

  BMWやマツダといったセダンに「ハンドリング」を最大の付加価値として与えてきたメーカーも、このサイズになってしまうとクルマの意味合いがどうしても変わってしまうようです。確かに車幅が増えてもハンドリングの精度と信頼性のおかげで、狭い道でもしっかりと「寄せる」ことができるBMWやマツダのクルマはアドバンテージがあります。ただ今後は北米市場に迎合する姿勢から「味」を失って、さらにバランスも失っていくのが想像できます。

  FF車に平気でV6を積んでしまうという、まったくデリカシーの無い設計(失礼!)がまかり通ってしまう北米市場は、アルファロメオやスバル、マツダ、BMWのような中型スポーツセダンの得意なメーカーにとってはまさに「鬼門」です。スポーティとは真逆の「日産ティアナ」のようなクルマが幅を利かせる世界が、唯一の巨大セダンマーケットになってしまった悲劇的な状況を受け入れなければなりません。