FFのアテンザとFR&AWDのスカイライン。直4&軽量が身上のアテンザとV6&剛性を主張するスカイライン。欧州に切り込むアテンザと北米を制するスカイライン。Dセグセダンに求められる性能を見事に分担しているアテンザとスカイラインですが、新型同士のデザインが似ていると少々話題になっているようです。もちろん同クラスながらこれだけキャラクターが異なる2台ですからデザインが被っていてもなんら問題は無さそうなのですが。
それぞれ2000年代に新型車種として開発されたアテンザとV35スカイラインは、どちらも当時最高のDセグドライビングカーとして人気を得ていたBMW3シリーズがターゲットだと公言していた。3シリーズは当時も今も8気筒のM3を頂点とした多グレード展開が基本であり、同じシャシーの中で量販車とスーパースポーツの顔を持っていた。とりわけボディ剛性に力点を置きつつもシャープなハンドリングがトレードマークだったようだ。
さてこの3シリーズを追っかけたクルマはアテンザ、スカイラインの他に、アルテッツァ、アコード、アルファ156があった。いずれもBMWを十分に追撃できる開発力を持ったメーカーばかりで、それぞれにメーカーの期待を一身に背負って登場しただけあって、すべて「名車」として広くその名を知られているものばかりだ。アルファ156は後継の159を残したが、159が生産中止になって以降はアルファロメオのDセグはラインナップから消えてしまった。
FFのアテンザはその設計上、直4エンジンのみの搭載となるため、必要以上に剛性を高めるのではなく、軽量でハンドリングに特化した味付けで3シリーズに対抗する方針を採った。FF車のハンドリングを大きく進化させるだけでなく、FRの3シリーズよりも良いハンドリングを目指す取り組みは無謀とも思えるが、不可能を限りなく可能な領域へと引きずり込む執念が功を奏して、日本の中型車として初めて欧州の扉をこじ開けた。3世代目のGJ系はディーゼルターボの性能でF30を圧倒・・・。
一方のスカイラインはボディ剛性で3シリーズを分かりやすく上回ることで決着を付けるという、極めて日産的な手法で開発が進んだ。初期モデルの3.5Lエンジン(VQ35)を後になってからBMWの直6ターボを潰す為だけに3.7L(VQ37)へと変更された。その結果、北米のDセグで最も高性能なベースグレードを持つ、北米のこのクラスの最高級車へと駆け上がる。そして見事にBMWから北米(プレミアム)での覇権を奪取した。おまけにR35GT-RでM3のプライドもズタズタにした。
もし日本にアテンザとスカイラインが無かったら・・・。日本メーカーはBMWに対抗するクルマが作れないことが表面化し、日本の高級車全体の信頼が大きく崩れてしまうだろう。日本車の面子を守るためにマツダと日産が必死になって作ってきたクルマが、アテンザとスカイラインだと言える。この2台とスバルのレガシィB4。これに乗らずに日本車をバカにする人は愚かだ。
まるでマツダと日産が打ち合わせをして作り分けたといってもいいくらいのアテンザとスカイラインの奇妙な関係は他にもある。GH系アテンザとV36スカイラインのデザインはどちらもフランス・イタリア車にルーツがあるようなエレガントさを、特にリアデザインにまとっている。借り物のアイデンティティだと切り捨てる人もいるだろうけど、日本のセダンのデザインを何としても変えようという必死さが心に染みる。
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