2014年7月8日火曜日

新型レガシィ に込められたスバルの信念

  世界のどこかに必ずユーザーはいる!という宛の無い冒険の旅に出ている日本車セダンの中にあって、新型レガシィの「何もしない」という堂々たるFMCぶりにはちょっと驚きです。トヨタやホンダがセダンに相応しい乗り味と優れた燃費を両立させたハイブリッドを投入しましたが、アメリカでのHV販売比率は低水準のままでやや空振りに終わった感があり、何もせずに研究開発費を温存できたスバルに完全に「風」が吹いてはいますが・・・。

  いまやグローバル販売の7割をアメリカ市場に依存しているスバル。OEM生産しているトヨタカムリも前倒ししたMC&フェイスリフトが大成功し、2014年5月度の販売で大幅に躍進しなんと約50000台を売り上げました。カムリはバカ売れなのにレガシィB4はさっぱりで、レガシィ全体の8割くらいがアウトバック(クロスオーバー)のシェアになってます。いよいよVWを抜き去りアメリカ市場で絶好調のスバルもブランド全体ではまだまだ45000台/月程度にすぎず、カムリ1車種よりも少ないのが現状です。

  生産能力が限界にきていることもあり、さらに北米に新工場を建設して、低成長の時代に強気なまでの生産力増強に打って出たスバルとしては、日本市場よりも自動車の変化に対して保守的な傾向を見せるアメリカ市場を睨んだFMCと言えるのかもしれません。もちろんアメリカに生産ラインを新設するということは、政治的な意味合いもあって「アメリカの皆さんスバル車をよろしく!」というゴマすりとも言えます。

  そんな中で発売されるのが、誰が見ても「スバルは変える気がない」と読み取れる新型レガシィですが、やはりアメリカ雑誌「Car and Driver」もデザインに関しては「まったく面白みなし!」と切り捨てています。それでも現行レガシィは日本でこそ失速しましたが、アメリカでは大躍進を果たしているので、面白みなしだけどアメリカ人にはウケるスタイルではあるようです。最近好調なフォード・フュージョンだってデザインに関しては似たようなつまらなさを感じます(失礼)。スバルは政治的に暗躍しているので、クルマはやや保守的に仕上げつつも「アメリカ人が好むセダンスタイル」としてそれなりに自信を持っているようです。

  それにしても外見は日産のティアナによく似ていて、バッジを見ないとまず見分けがつかないほどです。ティアナを去年のFMC前に初めて見た時には、何とも言えない失望感がありました。東京MSで大混雑のGT-Rブースのとなりでほとんど相手にされずに新型ティアナ佇んでいたのを思い出します。正直言ってあのときもっと良く見ておけばよかったなと、今になって後悔していたりするのですが・・・。このティアナのデザインはなぜかテーマカラーになっている赤はどうもイマイチで理解できないですが、その一方で黒は全体がシャープに見えてなかなかいい感じです。ただし黒だとなんとなく緑ナンバーが似合いそうなタクシーっぽい雰囲気にはなりますが。

  ティアナやレガシィの予想外に保守的なデザインを見ると、マツダ・アテンザやレクサスISのような「キャッチー」なデザインを施したセダンに対して、日産とスバルはややシニカルな想いすら感じているのか?という疑念が湧きます。「渋く」「地味」に作ってこそ「セダン」であり、プレミアムブランドへ憧れるユーザーが持つバイアスを利用して注目を集めようとする「やり方」はクルマの本質を歪めるし、それに群がる「ミーハー」なユーザーに乗ってほしいとも思わないのかも・・・。少なくとも「ティアナ」はそういうクルマになったと思います。初代や2代目はどこか色気付いていましたが、3代目は「乗ればわかる」といった達観したような趣きが感じられます。

  そしてこのティアナにそっくりのデザインで登場する予定の新型レガシィですが、現行モデルも乗り味の良さには定評があり、「見た目は・・・だけど、乗ってみたらやはりスバルのフラッグシップ」と唸らせられるでしょう。新型もデザイン自体はアメリカを意識した「ジャパニーズ・セダン」の王道スタイルなのでしょうが、日本市場ではマツダ・レクサスの「派手な」デザインと対比されるように、日産・スバルの「芯のある」デザインが作り分けられていて、セダンユーザーにとっては選択肢があることは歓迎すべきことではあります。マツダやレクサスが見落としている大切なものに、日産やスバルのセダンから気がつくことがありそうな予感です。とりあえず日本版の発表が楽しみで仕方がないです。


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