「カートップ」を読んでいたら、日産がおなじみのジャーナリスト連中にまたまたボロクソに言われていました。要約するとゴーン長期政権の弊害で社内の空気は最悪で、人材の流失が止まらなくなっていて今後のクルマ作りに大きな危惧を感じていて、さらに外国人の役員達が日本のメーカーの稼ぎで麻布界隈でVIPな生活をしているのがなんかムカつくという話みたいです。日本市場は捨てていて一人負け状態だけど商売上手でグローバルでは躍進・・・こんな会社をまともに応援できるか?という意見は確かにわからなくはないですけどね。
そんな批判を一身に浴びている日産ですが、私個人的にはもちろん良いところもあると感じていて、国産車も結構なお値段になってきた昨今の日本市場でスカイライン350GTというなかなかハイスペックで手の込んだ「GTセダン」を500万円で売る!なんてのはトヨタもホンダもマツダもとりあえずは真似出来ない芸当だと言えます。システム最大出力が350psは日本の道路事情を考えると無用の長物ではありますが、そこには日本の自動車産業を長年支えてきた日産の大いなるプライドが感じられるので素直に応援したい気分です。
8気筒や6気筒ターボで300~550psの暴力的な出力を誇るDセグメントは、端的にアメリカ市場だけを考えた仕様と考えられているようですが、ここにきて日本や欧州でもその価値がしだいに再評価されつつあるように思います。ちょっと前までは各国の排出基準が厳格化されるに従って大排気量エンジンを備えたハイスペックなGTカーはどんどん淘汰されることが予想されました。しかしスカイラインを除くライバル車においては800~1200万円の高付加価値な価格が付けられる利益率の高い商品であることから、各メーカーもまだまだやる気を完全には失ってはいないようで、何かのブレークスルーで市場が活性化するならば、すぐに参戦する!構えで待機しているようです。
2007年の日産GT-Rの発売により、C63AMGやM3といったドイツ勢の絶対的優位・神話がもろくも崩れ去りました。日産が振りかざした「究極の速さ」に翻弄されたようで、キング・オブ・GTカーの名を欲しいままにしてきたポルシェの熟成を重ねた水平対抗6気筒ターボの市販車は大規模リコール(エンジン発火)に悩まされました。「いくら速くしても日産の技術には敵わない・・・」。しかしドイツ勢に完全に引導を渡したことで、DセグGTカー市場全体にとっては非常にポジティブで新たな変化が見られたようで、「満足できるスペック(速さ)と信頼性」という新たな秩序のもとで300~500psの範囲のユニットを使った魅惑のモデルが相次いで登場しています。(XE・ジュリア 一体誰がDセグFR車の新規参入を数年前に予測できていたか?)
0-100km/hを2.7秒でクリアする性能なんて要らない!自然吸気のポルシェのタイム(5秒ジャスト!)くらいあれば十分に速い!という新たな定義が固定化?し、GT-Rによって淘汰されそうだった「自然吸気」「FR」といった豊かなドライブフィールを作る機構を全面的に擁護する流れになっています。ちょうど1969年にクオーツ時計が誕生し、消滅すると思われた機械式時計が10年足らずで息を吹き返し、今なお高級時計の基本形態として新たなムーブメントの設計が続けられている状況に近いかもしれません。クオーツの方が1000倍以上も正確なのに、1秒ごとにカタカタと動くステップ秒針の不粋さが嫌で、クオーツを嫌う人が時計好きには結構います。AWD&ターボ・・・確かに速いけどねぇ。
冒頭に書いたジャーナリスト連中は、V8エンジンがまだまだ主流のアメリカを、日産がまさに力を入れている市場だと断定し(間違ってないけど)、アメリカンサイズのGTカーは日本では扱いにくい!なんてステレオタイプな批判を繰り返しています。もちろんスカイラインの日本での販売は「32~34世代」に比べて大きく縮小していて、その一因がサイズであることも否定はしません。しかしスカイライン350GTは目下のところ日本市場でしかウケていないHV車ですし、車幅も日本の観光道路を無理なくこなせる1820mmに抑えられています(アメリカでは小振り?)。日産の立場で考えれば、どこよりもまず日本市場を考えたスポーツセダン(GTカー)ではないですかね・・・。
たしかにスカイラインに350psは日本の道路では完全にオーバースペックです。それでも日本にもドイツ車と互角以上に戦えるGTカーがある!ってことが素晴らしいわけで、日本車好きな人々にとっての「憧れ」をもっとも愚直に具現化してくれているのが日産だと思うのです。「日産こそがナンバー1のGTカーブランドだ!」という自負を持ち続け、2シーター(フェアレディZ)、4シーター(スカクー>-R)、セダン(スカイライン)のGTカー・主要3ジャンル全てで、走りについて妥協しないモデルを継続させています。ドイツ車の真似?という批判もやや的外れで、「スカイラインGT-R」は日本のバブルが生んだ間違いなくオリジナルなGTカーのコンセプトだからこそ世界中で大絶賛され伝説になりました。
あまり台数が稼げないクルマをいつまでも栃木でまとめて作り続ける体制を、「旧態依然」と笑う人もいるかもしれません。しかしハイクオリティ車は全量を本国の日本で作る!という日産のこの地道な取り組みが、日本におけるGTカーを楽しみたいという文化を守り続けています(逆輸入のスカイラインなんて・・・)。そういった姿勢が日本のユーザーの共感を生み、2.5Lベース車が無くても想像以上のセールスを記録しました。日産とスカイライン350GTが執念で切り開いた日本市場の活況により、いよいよBMW340i(3シリーズの非HV直6モデル)が日本市場で発売されることになりました。
「スカイラインとBMW340i」・・・2000年代以降北米で熾烈なライバル関係にあるため、どちらも高性能化に余念がなく、0-100km/hの加速はどちらもFRながらおよそ5秒、GT-RやM3ではありませんが「GTセダン」を名乗る資格はどちらにも十分にあります。
2012年のF30系3シリーズの発売時には、6気筒モデルはアクティブHVのみの設定として、燃費をやたらと気にする日本市場に過剰反応して、大きな失望を誘ったBMWですが、今回のビッグマイナーで軌道修正し直6ターボ(非HV)が復活しました。トヨタの8気筒、日産の6気筒、マツダの4気筒、スズキの小型向け4気筒それにホンダのVテックと、完成度の高い日本車エンジンの前に味わいもなにもないへったくれなドイツ勢のエンジンは無様でしたが、ポルシェの「フラット6」とBMWの「ストレート6」あとはAMGの「手組み8気筒」は今も別格で、文句無しに「指名買い」したくなるエンジンです。
少々失礼な話になりますが、中国で大量生産できるほどに「規格」の低いメルセデス(V6と直4ターボ)、BMW(直3直4ターボ)、VWアウディ(直3直4V6ターボ)は、レスポンスも音も没個性ですし、まったく熱を感じないその走りに自動車先進国のプライドすら感じられません(期待外れ!)。夜中の道路でもの凄いうなり音を上げながら軽自動車を煽り立てる某ドイツ車・・・見た所ノーマルなのに平坦路の60~70km/hでその音はあまりに酷いですね。 今や118iとかA180とかプリウス(10秒ジャスト)より加速のタイム悪いですし・・・10秒以上かかっております。見た目だけドイツ車ならばそれでいい!と割り切るユーザーに不必要にあれこれ言うつもりはないですが、そういうクルマばかりが日本の道路には増え続けていて、ドイツ車に本来期待される走行性能が備わったモデルは本当に少なくなりました・・・。
BMWがDセグをどう考えているかわかりませんが、3シリーズに比べて値引きが圧倒的に少ない4シリーズで直6ターボを新車で買うと1000万円近くします。F30系3シリーズに当初から設定されていたアクティブハイブリッドも同じくらいの価格です(このグレードは値引きはまず期待できません)。直6ツインターボで登場したM3/M4と価格面で大きな差はありませんし、アルピナB3/D3という選択もできます。1000万円あれば、GTーRもV8自然吸気が楽しめるレクサスRC-Fも検討できます。素人判断で恐縮ですがBMWの直6車は340i発売前の段階では日産・レクサス・メルセデスAMGの3強に阻まれて個性が発揮できていません。
さて「スカイライン350GT」は北米での車名を「インフィニティQ50HV」といい価格はおよそ45000ドルです。そして新たに発売が開始された「BMW340i」の価格も45000ドルで北米では待ったなしの同グレード・同価格車です。またこの2台が争う市場に新規参入する「ジャガーXE・S」(V6スーパーチャージャー340ps)は、まだ北米では正式な価格が発表されていません。さらに年内の導入が予定されているアルファロメオ・ジュリアは、510psの「クワドリフォリオ・ヴァルデ」が圧巻ですが、おそらくその下にマセラティ・ギブリのユニット(3LのV6・410psと330ps)を使ったモデルが用意されるでしょう。
日産・BMW・ジャガー・アルファロメオの4ブランドを軸にDセグGTセダンのシビアな価格競争に期待したいです。なんといっても最上級のタイプSPでも550万円!という素晴らしい価格設定をしているスカイラインが健在であるかぎり、これらGTセダンの法外な価格設定は回避できそうです。340iの価格は776万円となっていますが、今や3シリーズは400万円台のベースグレードでも100万円オーバーの値引きが当たり前(ディーゼルはアテンザより安かったりします!)ですから、340iの実勢価格は650万円を下回るのではないですかね・・・とりあえず来月になったら1度はBMWディーラーに行ってみる必要がありそうです。
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