2013年10月3日木曜日

これからのセダンは「普通」と「高級」の2パターン

  世界のセダン、と言っても日米独韓の4カ国のメーカーが製造するセダンですが、にあった「暗黙」の基準が完全に変わってしまったようです。以前はメルセデスが打ち立てたDセグ/Eセグ/Fセグの3グレード体制が主流でしたが、欧州と日本でのセダン人気の後退によりDセグの販売が世界的に低迷した結果、北米向けに新たに開発されたDとEの中間のような「DEセグ」とラグジュアリーセダンとしての「Fセグ」の2グレードに変わりつつあります。

  簡単に言うと「DEセグ」が普通のセダンで、「Fセグ」が高級なセダンです。普通のセダンといっても乗用車としては十分に高級な部類に入ります。イメージとしてはBMW5やメルセデスEと比較対象になるようなクルマです。最近ではカムリHVやアコードHV、アテンザなども十分にこのクラスで戦えるだけの「重厚感」をテーマに開発が行われていて、以前は「プレミアム」と「大衆」を隔てていた垣根がなくなりました。

  レクサスISやインフィニティQ50(スカイライン)など、上のクラス(GSやフーガ)と共通のプラットホームなので、クルマの性格が多少変わる程度で多くの機能を共用しています。GSとISの違いは細かいところを見ればいろいろあるのですが、根本的なものとしてはハイブリッドモデルのシステムくらいじゃないでしょうか。もはやユーザーの好みの問題です。ちょっと厳しい言い方をすると、GSに「特別な高級感」はなく、ISに「スポーツの要素」はないです。どちらも「普通のセダン」の範疇を出ていません。

  高級なセダンは一般の感覚からいうと「超高級」と言える1000万円クラスのセダンです。レクサスLS、Sクラス、7シリーズ、A8、パナメーラ、クワトロポルテ、ジャガーXJといったところです。一般的にV8エンジンを載せていそうなクラスなのですが、全グレードがV8という格式を保っているのは、意外なことに欧州車にはなく、レクサスLSのみです。最近ではV6ターボが多くなっていて、このクラスもいつまで「特別な地位」を保つことができるかは不透明です。

  日本メーカーのセダンは、生き残りを懸けての大きな動きを世界に先駆けて見せています。アコードとアテンザが北米サイズになり、国内専用モデルであるはずのクラウンも釣られて大型化しました。そして今年新たにスカイラインも大型化するようで、実質的にフーガに近いクルマになるようです。レガシィも来年のFMCで晴れてDEセグメントの仲間入りをする見通しです。ドイツメーカーの動きはやや不透明です。Eセグに関してはサイズは同じかやや小さくなる傾向があり、Dセグ(3シリーズ・Cクラス)は大型化しているので、今後3と5あるいはCとEはどのように差別化が図られるのか、あるいは統合されるのかはまだ予想が付きません。

  「普通のセダン」へと収束する動きは、やや思い込みもあるかもしれませんが、一般的に動きがモッサリしていて、ハンドリングはやや緩くなる傾向にあります。セダンの皮を被ったミニバンみたいな冴えないドライブフィールに堕することが、「普通のセダン」の宿命と思いたくはありませんが、ライバルとのコスト競争の中で、特に「運転補助システム」の開発に力が入れられてしまっていて、足回りやハンドリングの開発が不十分と評されるクルマが多くなっている印象です。新型アテンザも新型メルセデスEクラスもこの点が特に指摘されています。

  BMWやマツダといったセダンに「ハンドリング」を最大の付加価値として与えてきたメーカーも、このサイズになってしまうとクルマの意味合いがどうしても変わってしまうようです。確かに車幅が増えてもハンドリングの精度と信頼性のおかげで、狭い道でもしっかりと「寄せる」ことができるBMWやマツダのクルマはアドバンテージがあります。ただ今後は北米市場に迎合する姿勢から「味」を失って、さらにバランスも失っていくのが想像できます。

  FF車に平気でV6を積んでしまうという、まったくデリカシーの無い設計(失礼!)がまかり通ってしまう北米市場は、アルファロメオやスバル、マツダ、BMWのような中型スポーツセダンの得意なメーカーにとってはまさに「鬼門」です。スポーティとは真逆の「日産ティアナ」のようなクルマが幅を利かせる世界が、唯一の巨大セダンマーケットになってしまった悲劇的な状況を受け入れなければなりません。

  

  
  
  

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