2015年5月22日金曜日

ライバル壊滅で フーガ の刷新がなんとも地味。

  待望の日本復活を果たしたホンダ・レジェンドを盛り上げたいのですが、ホンダがいろいろとゴタゴタしていて、まともなプロモーションもしてもらえてないのが可哀相でなりません。そしてレジェンド再上陸をまるで妨害するかのように、突如として刷新(MC)されて後期型となった2代目フーガですが、こちらもV37スカイラインが予想以上の「大出世」によって、なんとなく存在意義がぼやけてしまった感があります。

  日本仕様のV37スカイラインからは廃止されてしまった大排気量の自然吸気エンジンという選択肢があること以外に、フーガを選ぶ事の必然性が非常に乏しくなったのが少々つらいところです。沢村慎太朗さんが「午前零時の自動車評論9」(最新刊)の中で、輸入車ではEセグセダンの存在意義がどんどん無くなっている!と高らかに宣言されていましたが、この例に漏れず「日産のフラッグシップ」という看板はシーマに譲り、同時にスカイラインのサイズ拡大でライバル(5シリ、E、A6)と同じく居場所を失いつつあるのがフーガかもしれません。

  日産の販売店が近所にあり、土地柄でしょうか割とフーガが売れているようで、店頭にはフーガの現行グレードで即納OKと思われる在庫車がデカデカと値札を付けて常時置いてあります。近くで見ても遠目にみても存在感は抜群ではありますが、オプション込みで400万円台という価格はグラっと来ますが、「欲しいか?」・・・あれこれ考えての結論として、やっぱり少々「情熱が足りない」のを感じてしまいます(250GTでは・・・)。それでももちろんこのクルマが「論外」だなんてことは決してないですし、このクラスでは最も魅力的であることは間違いないです。世界中のどこの市場に持っていっても、相対評価で常にトップを取れるだけのオールマイティな実力があるのはもちろん承知していまし、トヨタの国内専売セダンに匹敵する乗り心地と、グローバルの頂点としてメルセデスからも一定のリードを奪えるという日産の破天荒な飽くなき技術へのこだわりがそのまま形になったクルマです。

  フラッグシップでは絶対に負けは許さない!これは様々な文献から読み取ることができる日産伝統の社是です。カルロス=ゴーンが社長になったときに、各地に散らばる様々な開発部門が、それぞれ好き勝手に世界最高峰を視野に入れた技術を研究するために、予算が青天井になっているのを知って、あまりにクレイジーなコスト感覚の無さに卒倒したらしいです(だから業績改善も楽勝だった?)。わざわざ例を挙げるまでもなく、R35GT-Rではポルシェターボを超えた世界最速にこだわり、スカイラインの北米進出に際しては、わざわざ仕様変更を施したVQ37エンジンを投入してまでライバルのBMWの6気筒ターボを潰しにかかるなど、ルノー傘下になった現在でもその「闘争本能」は全く衰えていません。

  日本では日産はGT-R以外ではあまり「超高性能」を意識させるブランドではないですが、北米市場ではフーガ(インフィニティQ70)の最上級モデルには5.6LのV8自然吸気(420ps)が積まれていて、本体価格もなんと63000ドル〜と一流ラグジュアリーに匹敵します。5シリーズが50000ドル〜でEクラスが52000ドル〜ですからなんとも強気な価格設定がわかると思います。ちなみにアメリカでは旧型Eクラスのシャシーを使った「クライスラー300」とその兄弟車「ダッジ・チャージャー」の5.7LのV8搭載モデルはどちらもわずか32000ドルで手に入ります!・・・これはとっても羨ましいです。ちなみにアメリカではEクラスのV8搭載はAMGのみで10万ドル〜、5シリーズのV8モデル「550i」は65000ドル〜で、「M5」は94000ドル〜となっています。

  北米では「M3」と「RC-F」がおよそ62000ドル〜なので、フーガのV8モデルも日本の価格に直すと1000万円程度になりそうです(並行輸入では現在914万円らしい)。1000万円のフーガなんて日本で売られている姿がなかなか想像できないですが、北米では強気な価格設定でインフィニティのイメージリーダーとしての役割を十分に担っています。日本にインフィニティブランドを本格導入するとなれば、このゴージャスなフーガも投入されるとは思いますが、まだそこまで踏み切れない日産のもどかしさの中で、日本のファンに訴求できる「フーガ」の魅力は、じわりじわりと低下しているのがセダン好きにはちょっと辛いところです。

  もちろんフーガはアメリカを主戦場として開発されたクルマですし、5.6LのV8で420psで彼の地の「プレミアム・マッスルカー」市場に参入することに日産の意識が向いているはずなので、それならば日産が世界とガチンコで闘う「本気」のV8モデルを日本のファンにも売ってほしいものです。すでに日本でもGT-Rを販売しているので、単純にフーガのAWD&V8モデルにツインスクロールターボを組み込んで600psまで過給し、無理矢理に「E63AMG・S・4MATIC」に対抗して最速セダンを目指す必要もないですし、メルセデスは日産の重要なパートナーでもあります。

  しかし「フォード・マスタングV8」「シボレー・カマロV8」「キャデラックCTS-V」といった本場のマッスルカーが日本に今後も入ってくるようなので、これらに対する日本メーカーからの迎撃モデルとして「フーガV8」があると、日本のクルマ文化もなかなか盛り上がるのではないか?という気がします。アメリカから入ってくる素っ気ない「V8モデル」には、沢村さんが言うように魅力を失いつつある日本や欧州ブランドのEセグセダンが、V字回復するための重要なヒントがあるように思うのです。北米ビッグ3といえどもそれほど台数が稼げないFRシャシーに本格的な投資などできず、クライスラーはメルセデスの旧式を使い倒し、フォードもだいぶ経年がたったジャガー用のシャシーを簡素化(コストダウン)したものをマスタングに充当しています。またGMは傘下の豪ホールデンが開発した「ゼータ・シャシー」と2008年からキャデラックで使い始めた「シグマ2シャシー」(シグマのコストダウン版)をこれまで併用していましたが、今後は新設計の「アルファ・シャシー」に統合して、現行のCTS、ATSと次期カマロにも使うようです。

  確かに私は日本車は好きですが、別に日産が誇る「FMシャシー」で武装したフーガが、へなちょこシャシーの北米マッスル勢を迎え撃って格の違いを見せつける!という構図なんて期待していませんし、そんなことで「日本の誇り」を感じる!なんて前近代的な感傷に浸るなんて趣味はもはや卒業しました。シャシーなんてなんでもいいし、未だに80年代的なOHVのエンジンを使っていて、昔ながらのエンジンチューンを楽しむ人々の需要に応えている、アメリカン・クラシカルなV8マッスルに対し、VVEL(可変バルタイ)やDGI(直噴化)をガッツリ組み込んだ「VK56」という全く違う次元にある日本とアメリカの8気筒の乗り比べが出来れば(それぞれに良い点があると思います)、もっともっとクルマの面白さが広がる!なんてのは安易かもしれないですが・・・。まあ日産の英断に期待して待ちましょう。

  
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