BMWの「330i」と聞けば、普通なら直列6気筒のモデルだと何の疑いもなく思いますよね。今回のマイナーチェンジで330iは直4ターボになるそうですが、果たして下2桁の「30」は具体的に何を表しているんですかね?「馬力」?「トルク」?「価格」?これはBMWマニアでも簡単には説明できない「BMW進法」です。この表記が分り易いという人もいるのかもしれないですが、同じエンジンを使った3シリと5シリでも数字が違ったりすると、何だかブランドの名声に相応しくない「虚偽的」な情報発信ではないかという気が・・・。何でドイツプレミアム車(あとレクサスと日産も)は「数字」に拘るのでしょうか。318i〜340iまでずらりと用意されれば、私のような小心者は340iを買わなければ!という強迫観念の「カモ」にされている被害者意識から、あまりマトモに購入を検討できないでいます(日本にはセダンの340iは無いみたいですが)。
決してダメなクルマじゃないことは判るんですけど、このブランドの販売戦略には無意識の内にどうも嫌悪感がありまして、結局のところどう間違っても買わないクルマになってしまい、選択肢が自動的に減っているのがなんだか口惜しいです。噂によると最近では値引きがなかなかスゴいことになっていて、アテンザXDのLパケをマトモに買うくらいなら、320dの方が安く手に入るみたいですね(もちろん新車です)。ここまでお手軽ならば、ちょっと試してみようか?という気分に度々なるのですが、乗りに行って素直に感じられるのは、「さすがBMW!スムーズだ!」と「やっぱりブランドの下流だな・・・」という背反で、結局はプラマイゼロな印象です(決してトータルマイナスではないですけど)。そしてやっぱりドイツ車・ドイツブランドは日本のクルマとは全く文化が違うんだなと改めて思うわけです。
日本ブランドにとってのセダン(このブログでターゲットとするクラスのもの)は、あくまで「極上」であることが最低条件です。国産のセダンはどれに乗っても「このクルマはコンパクトカーとは違う!」という悲痛なまでの開発者の意地を感じます。言うまでもないですが、コンパクトカーの2倍以上の販売価格ですから、誰でも簡単に判るレベルの「差別化」を盛り込む必要があります。それはまさに「クラウン/マークⅡ/コロナ/カローラ」の時代から日本メーカーのセダン開発に染み込んできたDNAです。当然にBMWやメルセデスにもさらにシビアなブランド内ヒエラルキーが存在しますから、「差別化」という意識はあります。しかしメルセデスやBMWがこれまで歩んできた背景には、「アウトバーン追越レーン仕様車」という絶対的に不可欠な要素があって、その中で打ち立ててきた「高性能神話」の延長線上でいまもやや高飛車なセダン商売をしているといえます。
メルセデスやBMWが持つ「特性」の前に実力差を見せつけられた1980・90年代の日本車がどうだったなんて、ハッキリ言って、今カーライフを満喫する人々にとっては別にどうでもいいことなんですけど、自動車評論家や古くからのクルマ好きの皆様のイメージはまだまだ20年前当時のままなんだと感じることも多いです。大変に失礼ですが、世間からみればクルマ好きとは大概はただの「バカ」なので、時代の変化について認識を改めろという方が無理なのかもしれませんが・・・。まあとにかく、「日本車はダメだね〜」みたいな口癖の人はプロ・アマ問わずたくさんいますし、それはまあ仕方のないことなんだと思います。
2000年代を迎えて、トヨタ以外の普通車はグローバル化が必須となり、当然に日本のセダンにもメルセデスやBMWと同じ「250km/h対応仕様」なる処置がとられるようになりました。まあ簡単に言うとメルセデスやBMWの上級モデルと同じくらいの限界性能を備えたシャシーを当たり前に使っているという話です。現在も欧州で中型車を販売しているトヨタ(レクサス)・日産(インフィニティ)・ホンダ・マツダ・スバルの5メーカー全てがこの水準をクリアしています。こういったごくごく常識的な前提を、なぜか読者に対してひた隠しにして、ドイツ車にはまだまだ及ばない〜!なんてクソ論を展開するライターが困ったことに多いですね(そういう偽善者しか仕事が貰えない世界か?)。
確かに日本メーカーが「250km/h対応仕様」を取り入れたのは、マツダが初代アテンザ(2003年〜)から、レクサスは現行LS(2006年〜)、GS(2012年〜)、IS(2013年〜)からであり、まだまだメルセデスやBMWに比べれば歴史が浅いです。しかしトヨタがBMWと、日産がメルセデスと、対等な関係での提携を結んでいて、高級セダンにおける共同開発が盛り込まれていることからも、日本勢がすでにメルセデスやBMWと全く同じ土俵に立っていることがわかります。なによりもこれらのクルマを逐一試してみればわかりますが、走行安定性においてドイツ勢に明確なアドバンテージなどは一切なく、結局のところ系列部品メーカーを抱える日本勢の「インテグラル・アーキテクチャ(擦り合わせ)」による高い技術力が目立つ・・・というのが嘘偽りのない評価なんです。
それでもメルセデスやBMWのコクピットに収まったときに感じる、ブランドのフィロソフィみたいのが好き!という人の感性を否定するつもりは毛頭ありません。確かにCクラスも3シリーズも「コクピット第一主義」とでもいうべき意匠は強く感じます。日本勢がちょっと「弱い」と感じる点がここです。マツダ・アテンザはMCによっていよいよ欧州車への憧れを隠せないインテリアになりましたし、スバル・レガシィはそんなマツダを参考にしている節が多くあります。一方で、スカイラインやISはというと、高い質感を誇ってはいますが、残念ながら「足踏み式サイドブレーキ」のギコギコしたフィールが、完全に世界観をぶっ壊しています。同じくCクラスのコラム式シフトも幾分かブランドイメージを後退させてはいるのですが・・・。インテリアに関してはあくまで素朴な3シリーズが秀逸?なのかもしれません。
「NVHやハンドル/アクセル/ブレーキのフィール」を絶対視する日本勢と、「コクピット第一主義」のドイツ勢ということで、ユーザーの好き嫌いの問題じゃないか?で終わらせてもいいのですけど、先日読んだ「モーターマガジン7月号」のDセグセダン評があまりにもひどかったので、当該雑誌の主筆を務めるアホなオッサンライターに向けて「放言」したいと思います。現行のCクラスと3シリーズの最大にして決定的な弱点は、完全にドイツ車としてのポリシーが欠落しているところなんですよね。BMWとメルセデスの営業マンにそれぞれ言ったことがありますが、「これって日本車っぽくないですか?」ってことです。フロントデザインの押し出しの強さだったり、想像よりもずっと柔らかいアシ回りだったり、座面の調整幅が日本勢よりも自由度がなく、その分シートが柔らかくて摩擦が少ないものだったり・・・。
Cクラスも3シリーズも期待値が高い分だけ、乗ったあとの感想は「なんか見失っているんじゃないの?」という残念な気持ちです。スカイライン、アテンザ、レガシィはどれももっと乗り味に「個性」があります。この3台はDセグのゾーンを突き破り、Eセグに近いということも、クルマの奥深さがあるという点に影響してはいると思います(安定感などに)。日本勢がめいめい勝手に進化を遂げているのに比べると、Cクラスや3シリーズの進化はハッキリ言ってノロいですし物足りないです(Cクラスなんて出来損ない?)。日本で走るならこのサイズがベストで、エンジンも「必要十分」なもので、多段式ステップATが・・・なんてステレオタイプで「中身」のない評論をあちこちで見かけますが、こんな能天気な文章で納得するのは「クルマに興味ない人々」だけじゃないですかね。さて「モーターマガジン」が一体いつまでCクラスや3シリーズを日本勢の上に置き続けられるか見届けたいと思います。
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