世界のセダン、と言っても日米独韓の4カ国のメーカーが製造するセダンですが、にあった「暗黙」の基準が完全に変わってしまったようです。以前はメルセデスが打ち立てたDセグ/Eセグ/Fセグの3グレード体制が主流でしたが、欧州と日本でのセダン人気の後退によりDセグの販売が世界的に低迷した結果、北米向けに新たに開発されたDとEの中間のような「DEセグ」とラグジュアリーセダンとしての「Fセグ」の2グレードに変わりつつあります。
簡単に言うと「DEセグ」が普通のセダンで、「Fセグ」が高級なセダンです。普通のセダンといっても乗用車としては十分に高級な部類に入ります。イメージとしてはBMW5やメルセデスEと比較対象になるようなクルマです。最近ではカムリHVやアコードHV、アテンザなども十分にこのクラスで戦えるだけの「重厚感」をテーマに開発が行われていて、以前は「プレミアム」と「大衆」を隔てていた垣根がなくなりました。
レクサスISやインフィニティQ50(スカイライン)など、上のクラス(GSやフーガ)と共通のプラットホームなので、クルマの性格が多少変わる程度で多くの機能を共用しています。GSとISの違いは細かいところを見ればいろいろあるのですが、根本的なものとしてはハイブリッドモデルのシステムくらいじゃないでしょうか。もはやユーザーの好みの問題です。ちょっと厳しい言い方をすると、GSに「特別な高級感」はなく、ISに「スポーツの要素」はないです。どちらも「普通のセダン」の範疇を出ていません。
高級なセダンは一般の感覚からいうと「超高級」と言える1000万円クラスのセダンです。レクサスLS、Sクラス、7シリーズ、A8、パナメーラ、クワトロポルテ、ジャガーXJといったところです。一般的にV8エンジンを載せていそうなクラスなのですが、全グレードがV8という格式を保っているのは、意外なことに欧州車にはなく、レクサスLSのみです。最近ではV6ターボが多くなっていて、このクラスもいつまで「特別な地位」を保つことができるかは不透明です。
日本メーカーのセダンは、生き残りを懸けての大きな動きを世界に先駆けて見せています。アコードとアテンザが北米サイズになり、国内専用モデルであるはずのクラウンも釣られて大型化しました。そして今年新たにスカイラインも大型化するようで、実質的にフーガに近いクルマになるようです。レガシィも来年のFMCで晴れてDEセグメントの仲間入りをする見通しです。ドイツメーカーの動きはやや不透明です。Eセグに関してはサイズは同じかやや小さくなる傾向があり、Dセグ(3シリーズ・Cクラス)は大型化しているので、今後3と5あるいはCとEはどのように差別化が図られるのか、あるいは統合されるのかはまだ予想が付きません。
「普通のセダン」へと収束する動きは、やや思い込みもあるかもしれませんが、一般的に動きがモッサリしていて、ハンドリングはやや緩くなる傾向にあります。セダンの皮を被ったミニバンみたいな冴えないドライブフィールに堕することが、「普通のセダン」の宿命と思いたくはありませんが、ライバルとのコスト競争の中で、特に「運転補助システム」の開発に力が入れられてしまっていて、足回りやハンドリングの開発が不十分と評されるクルマが多くなっている印象です。新型アテンザも新型メルセデスEクラスもこの点が特に指摘されています。
BMWやマツダといったセダンに「ハンドリング」を最大の付加価値として与えてきたメーカーも、このサイズになってしまうとクルマの意味合いがどうしても変わってしまうようです。確かに車幅が増えてもハンドリングの精度と信頼性のおかげで、狭い道でもしっかりと「寄せる」ことができるBMWやマツダのクルマはアドバンテージがあります。ただ今後は北米市場に迎合する姿勢から「味」を失って、さらにバランスも失っていくのが想像できます。
FF車に平気でV6を積んでしまうという、まったくデリカシーの無い設計(失礼!)がまかり通ってしまう北米市場は、アルファロメオやスバル、マツダ、BMWのような中型スポーツセダンの得意なメーカーにとってはまさに「鬼門」です。スポーティとは真逆の「日産ティアナ」のようなクルマが幅を利かせる世界が、唯一の巨大セダンマーケットになってしまった悲劇的な状況を受け入れなければなりません。
2013年10月3日木曜日
2013年7月5日金曜日
「ドイツ車に足りないものを持った秀逸・中級車」 アウディA6/S6
はじめに・・・本ブログ記事では、
「入門車」⇒2~2.5LのNAのDセグセダン
「中級車」⇒3.0~3.7LのNA/ターボのD/Eセグセダン
「上級車」⇒V8以上のエンジンを搭載した高級モデル
と独自の(勝手な)クラス分けを用いています。ご了承ください。
高級車としてのセダンは今でも街中で目立つ存在ではある。しかしレクサスGS&LS、BMW5&7、メルセデスE&Sといった日本でもおなじみの高級セダンのデザインを「相対的」ではなく「絶対的」に評価するならば、果たしてどれほど胸がときめくだろうか? あくまでフォーマルな状況で使われることを想定されているから、スポーツカーのような華美な意匠は御法度なのだろうが、それでもちょっと値段なりのドキドキ感があってもいいのではないかという気がする(私がガキすぎるだけかもしれないが・・・)。
それでもこのアウディA6に関しては、他とはひと味違う高級車のフォルムを感じる。「中級車」に分類されるクルマは一般に車体の大きさに比してランプ類やキャラクターラインが小振りで、やや無機質な「間延び」を感じるデザインに陥ることが多い。しかしこのアウディA6は大きめに採られたグリルが車体の雄大さに良くマッチしていて、ライバル車と比べてかなりダイナミックで統一感のあるデザインに仕上がっている。このA6が2004年に登場したとき以来、高級セダンのデザインは突如として進化を始めた。その後に登場したメルセデスEクラスやレクサス各車、トヨタクラウンなどが一生懸命にフォローしているが、いまだにアウディを超えるグリルデザインは登場していないようだ。
このアウディA6/S6の実力として高く評価したいのは、エンジンの設定がとても絶妙で乗り手のニーズに真摯に応えようといている姿勢だ。燃費重視のハイブリッドのFFモデルもあるが、とりあえずアウディ本来の楽しさを味わうにはAWDの「クワトロ」を選びたい気がする。日本公式発売のA6に設定されているガソリンエンジンは2.8LのNAと3.0Lターボの2種類のV6だ。この2グレードはなんと価格が200万円以上も違うからちょっとびっくりしてしまう。当然にこれだけ価格の高い3Lターボモデルはアクセルを踏み込んだ瞬間に「全能の神」になったようなトルクが味わえるので、一度乗ってしまったらもうヤミツキになるほどだ。
廉価の2.8Lモデルも決してパワー不足なんて感じさせないだけの実力を「隠し持って」いる。こちらはアウディには珍しいNAエンジンでこれがメルセデスの3.5Lに負けないくらいによく回る。3Lターボに使われているエンジンとは特性が違っていて、完全に作り分けられている。廉価モデルにも関わらず、MTモードで低速ギアに抑えて加速していけば相当にパワフルだ。トラクション全開のAWDにNAのレスポンスが染み渡っていく「快感」はターボモデルには無い良さがある。アウディ車に何を求めるかにもよるだろうが、このベースグレードのエンジンも相当に楽しめる。
ちょっと野暮だが、A6のこのガソリン2グレードの設定はスバル・レガシィのNAとDITターボモデルの関係に近い。「入門車」のレガシィにとって「中級車」のA6は上位互換車といってもいいかもしれない。「入門車」であるアウディA4は2Lターボの超ロングストロークというトルク重視の設定で、スポーティさに欠けるのであまりオススメはできないが・・・。
3Lターボは燃費さえ気にしなければ、「GTカー」としての実力を全方向的に発揮できる「抜群」なクルマで、その実力は並みいるFRのライバル車を多くの面で上回る実力を持っている。なによりAWDの直進安定性とトルクが出やすいエンジンの組み合わせこそが、ガソリンエンジン時代の最後を飾る最高の「GTカー」のパッケージなのではないかと思える。こういうクルマをレガシィ以外にも「ターボ本家」の三菱や日産にも期待したかったがどうやらどちらも全く作る気はなさそうだ。このA6のデザインが若くして日産を辞めてアウディに活路を求めた日本人デザイナーによって生み出されたことを考えると、国産車好きとしては非常に残念に感じてしまうのだが・・・。
↓A6のデザイナー和田智さん。やはりこのデザインは日本人に響く。
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和田智
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