2015年10月15日木曜日

ジャガーXF 「ジャガーが推し進めるセダンの再定義」

  クラウン・アスリートに2Lターボのグレードが追加されました。・・・なんでアスリートだけなのか?まあいろいろと理由はあるのでしょうが、クラウンのスポーティグレードだからターボがイメージに合うから!という方針とかだったら、なんだかトヨタにはガッカリですね。ダウンサイジングターボを意図的にユーザーにスポーティなターボと受け取らせるという安易なイメージのすり替えをブランドの顔とも言えるフラッグシップサルーンでやってしまいますかね? 

  合理主義でクルマが刷新されている昨今の欧州ブランドでは、メルセデスSクラス、BMW7シリーズ、アウディA8といったフラッグシップサルーンは欧州ではすでに2Lターボで走っているようですが、メルセデスなどは日本での伝統を考慮して今のところは直4モデルは新しいディーゼルHVのグレードのみとなっています。そんな中で日本でもフラッグシップに2Lターボを持ち込んでいるのがジャガーXJです。フォードから供給されているマツダが設計した直4ターボを245psにチューンしたものをベースグレードで使っています。

  ジャガーは他のブランドに先駆けて車体の軽量化に取り組んでいて、2t越えが当たり前となっているフルサイズセダンにおいてジャガーXJのベースグレードは1780kgと一つ下のクラスの5シリーズやEクラスと同等の車重に抑えられています。2Lターボを使うXJのパワーウエイトレシオは、とりあえず523iを軽く上回り、528iと同等になっているので、動力性能には不満はないでしょ!というのがジャガーなりの言い分のようです。

  ジャガーのアルミによるシャシー&ボデーは意外に日本メーカーの泣き所を突いていて、アルミ精錬&加工には電力が必要で、電気代が高い日本は製造に不向きです。アルミといえばNSXですが、ホンダはこのクルマのために栃木に専用の水力発電を併設した工場まで作ってました。最近では新たにアウディやメルセデスがアルミを使うようになったようです。

  ジャガーXJよりも車体が小振りの日本サイズを守りつづけるクラウンアスリートは、とくにアルミボディを使うこともなくても、トヨタが世界に誇る軽量化技術をフルに使って1590kgまで抑えられていて、さらに一つ下のCクラスや3シリーズと同等の車重になっています。ジャガーが軽量化を絶対的な根拠として2Lターボで、非常に経済的なフラッグシップサルーンを仕立てていますが、クラウンも同じ方向を向いていて、自慢の軽さを利点とするならば、案外2Lターボが似合うクルマと言えるかもしれません。

  ジャガーが敷いた路線にあのトヨタが乗った!・・・いよいよトヨタもドイツ車に追従してターボ化!などとカーメディアでは言われていますが、例えば5シリーズとクラウンでは同じセダンでもクルマの方向性がまるで違います。528iと同等の2Lターボを積んだからといってもクラウンアスリート・ターボがどう頑張っても528iの互換モデルにはなれないですし、両車のユーザーは最初から分かれています。現在のところ5シリーズの互換モデルとして本気で開発されている日本車は、やはりレクサスGS、スカイライン、レジェンドの3台だけだと思います。

  「5シリーズとクラウンは違う!」・・・とても当たり前のことではありますが、この「違い」が実際のところ多くのクルマユーザーに感覚的に理解されていないことが、セダンの魅力がイマイチ伝わらない一因なのではないかと思ってます。これを的確な表現で伝えるのがプロの自動車評論家の仕事のはずですが、なんだか最近のライターはセダンの実用性が全く見えていないのでは?と思うほどに書き方が酷いケースすらあります。あれこれ読んでみると結局は「5シリーズは世界の頂点!クラウンは日本で使うにはいいかも・・・」みたいなステレオタイプな表現ばかりがまかり通っています。とりあえずこういうバカらしいことをプロの仕事として書いているライターは辞めた方がいいと思います。

  これらの意見を鵜呑みにして5シリーズを買ってしまった人々の中には、どうやら5シリーズのイメージと現実が乖離し過ぎていて、肝心の所有がなかなか長続きしないことも多いようです(BMWを5年以上乗っても美味しくない!という意見もありますが)。5シリーズといってもピンキリなので一概には言えませんが、このクルマを1台持ちしてみると、なんとも使い勝手が悪くてクルマに乗るのが億劫になることも多いようです・・・。もちろんこのクルマの車体剛性や抜群の足回りからくるボディサイズを気にしない操縦感は素晴らしいですけども、高速の追い越し車線をえらいスピードで爆走するくらいしかその性能を伺うチャンスは無いです(高速でぶっ飛ばしているクルマの定番・・・一発免消で手放す?)。

  その一方でクラウンですが、5シリーズを「是」とする議論のベクトル上では、いろいろ不満な点は確かにあります。ペダルフィールもハンドリングも足回りもなにもかもが「煮詰め不足」だと判定されても仕方ないですけど、静粛性や扱いやすさといった面では確実に5シリーズを上回ります。ランニングコストも安いですし、乗り心地ももちろん上質です。BMW乗りに言わせればいろいろツッコミどころはあるのですが、クラウン乗りに言わせれば5シリーズはなかなかの面倒臭さを持つ鈍臭いクルマだと言えます。

  「5シリーズ・スカイライン」と「ジャガーXF・クラウン」という対比の構図だと、もっと多くの人にわかってもらえるかもしれません。ジャガーXFは今回フルモデルチェンジでさらなる軽量化が図られました! 前者は「足固め・剛性高め・出力盛り盛り・ハンドリング命」のグループで、後者は「上質な乗り心地・おもてなし・角の無い乗り味・気楽な操作感」のグループです。この両グループは自車の特徴をよく考えて作られていますが、世の中にはメルセデスEクラス、アウディA6、マセラティ・ギブリのようにどちらに属するのかいまいち分らないサルーンもあります。Eクラスは5シリーズを意識している?そしてA6とギブリはクラウンみたい?といった声もあるようですが・・・。

  さてクラウン・ターボを中国向けの次いでにターボ化されたクルマ!と吐き捨てるのは簡単ですが、日本で売られているフラッグシップサルーンは国産・輸入問わずどれも中国市場も視野に入れたクルマですから、そんな偏見は持つべきではないでしょう。それよりもジャガーXFの路線を追いかけるトヨタの新感覚サルーンとして、価格帯やサイズからも新たなライバルとなっているスカイラインとの対峙するポジションを占めるモデルへと成長していくことを期待したいです。まずはジャガーXFのような色気があれば・・・。


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2015年9月13日日曜日

スカイライン350GT とBMW340i の対峙・・・

  「カートップ」を読んでいたら、日産がおなじみのジャーナリスト連中にまたまたボロクソに言われていました。要約するとゴーン長期政権の弊害で社内の空気は最悪で、人材の流失が止まらなくなっていて今後のクルマ作りに大きな危惧を感じていて、さらに外国人の役員達が日本のメーカーの稼ぎで麻布界隈でVIPな生活をしているのがなんかムカつくという話みたいです。日本市場は捨てていて一人負け状態だけど商売上手でグローバルでは躍進・・・こんな会社をまともに応援できるか?という意見は確かにわからなくはないですけどね。

  そんな批判を一身に浴びている日産ですが、私個人的にはもちろん良いところもあると感じていて、国産車も結構なお値段になってきた昨今の日本市場でスカイライン350GTというなかなかハイスペックで手の込んだ「GTセダン」を500万円で売る!なんてのはトヨタもホンダもマツダもとりあえずは真似出来ない芸当だと言えます。システム最大出力が350psは日本の道路事情を考えると無用の長物ではありますが、そこには日本の自動車産業を長年支えてきた日産の大いなるプライドが感じられるので素直に応援したい気分です。

  8気筒や6気筒ターボで300~550psの暴力的な出力を誇るDセグメントは、端的にアメリカ市場だけを考えた仕様と考えられているようですが、ここにきて日本や欧州でもその価値がしだいに再評価されつつあるように思います。ちょっと前までは各国の排出基準が厳格化されるに従って大排気量エンジンを備えたハイスペックなGTカーはどんどん淘汰されることが予想されました。しかしスカイラインを除くライバル車においては800~1200万円の高付加価値な価格が付けられる利益率の高い商品であることから、各メーカーもまだまだやる気を完全には失ってはいないようで、何かのブレークスルーで市場が活性化するならば、すぐに参戦する!構えで待機しているようです。

  2007年の日産GT-Rの発売により、C63AMGやM3といったドイツ勢の絶対的優位・神話がもろくも崩れ去りました。日産が振りかざした「究極の速さ」に翻弄されたようで、キング・オブ・GTカーの名を欲しいままにしてきたポルシェの熟成を重ねた水平対抗6気筒ターボの市販車は大規模リコール(エンジン発火)に悩まされました。「いくら速くしても日産の技術には敵わない・・・」。しかしドイツ勢に完全に引導を渡したことで、DセグGTカー市場全体にとっては非常にポジティブで新たな変化が見られたようで、「満足できるスペック(速さ)と信頼性」という新たな秩序のもとで300~500psの範囲のユニットを使った魅惑のモデルが相次いで登場しています。(XE・ジュリア 一体誰がDセグFR車の新規参入を数年前に予測できていたか?)

  0-100km/hを2.7秒でクリアする性能なんて要らない!自然吸気のポルシェのタイム(5秒ジャスト!)くらいあれば十分に速い!という新たな定義が固定化?し、GT-Rによって淘汰されそうだった「自然吸気」「FR」といった豊かなドライブフィールを作る機構を全面的に擁護する流れになっています。ちょうど1969年にクオーツ時計が誕生し、消滅すると思われた機械式時計が10年足らずで息を吹き返し、今なお高級時計の基本形態として新たなムーブメントの設計が続けられている状況に近いかもしれません。クオーツの方が1000倍以上も正確なのに、1秒ごとにカタカタと動くステップ秒針の不粋さが嫌で、クオーツを嫌う人が時計好きには結構います。AWD&ターボ・・・確かに速いけどねぇ。

  冒頭に書いたジャーナリスト連中は、V8エンジンがまだまだ主流のアメリカを、日産がまさに力を入れている市場だと断定し(間違ってないけど)、アメリカンサイズのGTカーは日本では扱いにくい!なんてステレオタイプな批判を繰り返しています。もちろんスカイラインの日本での販売は「32~34世代」に比べて大きく縮小していて、その一因がサイズであることも否定はしません。しかしスカイライン350GTは目下のところ日本市場でしかウケていないHV車ですし、車幅も日本の観光道路を無理なくこなせる1820mmに抑えられています(アメリカでは小振り?)。日産の立場で考えれば、どこよりもまず日本市場を考えたスポーツセダン(GTカー)ではないですかね・・・。

  たしかにスカイラインに350psは日本の道路では完全にオーバースペックです。それでも日本にもドイツ車と互角以上に戦えるGTカーがある!ってことが素晴らしいわけで、日本車好きな人々にとっての「憧れ」をもっとも愚直に具現化してくれているのが日産だと思うのです。「日産こそがナンバー1のGTカーブランドだ!」という自負を持ち続け、2シーター(フェアレディZ)、4シーター(スカクー&GT-R)、セダン(スカイライン)のGTカー・主要3ジャンル全てで、走りについて妥協しないモデルを継続させています。ドイツ車の真似?という批判もやや的外れで、「スカイラインGT-R」は日本のバブルが生んだ間違いなくオリジナルなGTカーのコンセプトだからこそ世界中で大絶賛され伝説になりました。

  あまり台数が稼げないクルマをいつまでも栃木でまとめて作り続ける体制を、「旧態依然」と笑う人もいるかもしれません。しかしハイクオリティ車は全量を本国の日本で作る!という日産のこの地道な取り組みが、日本におけるGTカーを楽しみたいという文化を守り続けています(逆輸入のスカイラインなんて・・・)。そういった姿勢が日本のユーザーの共感を生み、2.5Lベース車が無くても想像以上のセールスを記録しました。日産とスカイライン350GTが執念で切り開いた日本市場の活況により、いよいよBMW340i(3シリーズの非HV直6モデル)が日本市場で発売されることになりました。

  「スカイラインとBMW340i」・・・2000年代以降北米で熾烈なライバル関係にあるため、どちらも高性能化に余念がなく、0-100km/hの加速はどちらもFRながらおよそ5秒、GT-RやM3ではありませんが「GTセダン」を名乗る資格はどちらにも十分にあります。

  2012年のF30系3シリーズの発売時には、6気筒モデルはアクティブHVのみの設定として、燃費をやたらと気にする日本市場に過剰反応して、大きな失望を誘ったBMWですが、今回のビッグマイナーで軌道修正し直6ターボ(非HV)が復活しました。トヨタの8気筒、日産の6気筒、マツダの4気筒、スズキの小型向け4気筒それにホンダのVテックと、完成度の高い日本車エンジンの前に味わいもなにもないへったくれなドイツ勢のエンジンは無様でしたが、ポルシェの「フラット6」とBMWの「ストレート6」あとはAMGの「手組み8気筒」は今も別格で、文句無しに「指名買い」したくなるエンジンです。

  少々失礼な話になりますが、中国で大量生産できるほどに「規格」の低いメルセデス(V6と直4ターボ)、BMW(直3直4ターボ)、VWアウディ(直3直4V6ターボ)は、レスポンスも音も没個性ですし、まったく熱を感じないその走りに自動車先進国のプライドすら感じられません(期待外れ!)。夜中の道路でもの凄いうなり音を上げながら軽自動車を煽り立てる某ドイツ車・・・見た所ノーマルなのに平坦路の60~70km/hでその音はあまりに酷いですね。 今や118iとかA180とかプリウス(10秒ジャスト)より加速のタイム悪いですし・・・10秒以上かかっております。見た目だけドイツ車ならばそれでいい!と割り切るユーザーに不必要にあれこれ言うつもりはないですが、そういうクルマばかりが日本の道路には増え続けていて、ドイツ車に本来期待される走行性能が備わったモデルは本当に少なくなりました・・・。

  BMWがDセグをどう考えているかわかりませんが、3シリーズに比べて値引きが圧倒的に少ない4シリーズで直6ターボを新車で買うと1000万円近くします。F30系3シリーズに当初から設定されていたアクティブハイブリッドも同じくらいの価格です(このグレードは値引きはまず期待できません)。直6ツインターボで登場したM3/M4と価格面で大きな差はありませんし、アルピナB3/D3という選択もできます。1000万円あれば、GTーRもV8自然吸気が楽しめるレクサスRC-Fも検討できます。素人判断で恐縮ですがBMWの直6車は340i発売前の段階では日産・レクサス・メルセデスAMGの3強に阻まれて個性が発揮できていません。

  さて「スカイライン350GT」は北米での車名を「インフィニティQ50HV」といい価格はおよそ45000ドルです。そして新たに発売が開始された「BMW340i」の価格も45000ドルで北米では待ったなしの同グレード・同価格車です。またこの2台が争う市場に新規参入する「ジャガーXE・S」(V6スーパーチャージャー340ps)は、まだ北米では正式な価格が発表されていません。さらに年内の導入が予定されているアルファロメオ・ジュリアは、510psの「クワドリフォリオ・ヴァルデ」が圧巻ですが、おそらくその下にマセラティ・ギブリのユニット(3LのV6・410psと330ps)を使ったモデルが用意されるでしょう。

  日産・BMW・ジャガー・アルファロメオの4ブランドを軸にDセグGTセダンのシビアな価格競争に期待したいです。なんといっても最上級のタイプSPでも550万円!という素晴らしい価格設定をしているスカイラインが健在であるかぎり、これらGTセダンの法外な価格設定は回避できそうです。340iの価格は776万円となっていますが、今や3シリーズは400万円台のベースグレードでも100万円オーバーの値引きが当たり前(ディーゼルはアテンザより安かったりします!)ですから、340iの実勢価格は650万円を下回るのではないですかね・・・とりあえず来月になったら1度はBMWディーラーに行ってみる必要がありそうです。

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2015年7月29日水曜日

ボルボS60にディーゼルは「鬼に金棒」か?

  マツダ・アテンザのディーゼルシェアが相変わらず7割を超えているそうです。販売台数もしぶとく月間1000台程度は確保していて、絶対的な地盤を持つクラウンには遠く及びませんが、トヨタのHV勢(カムリHV、レクサスIS300h)に対しては完全に優位に立っています。いよいよディーゼルが市民権を得て、日本市場のDセグセダンのメインユニットは「ディーゼルvsハイブリッド」の二極化を進むことがほぼ確定したようです。おそらくこの夏に参入するジャガーXEもBMW3シリーズと同じようにディーゼルが全体の半数以上を占めるでしょうし、新たに発表されたボルボS60もまたディーゼルモデルを前面に押し出しての巻き返しを狙っているようです。

  「マツダ」「ジャガー」「ボルボ」といった旧フォード傘下の乗用車ブランドが、SUVだけでなく世界的に伸び悩んでいると言われるDセグセダンで勝負してくれることは嬉しいです。しかもそれぞれ別個に新型クリーンディーゼルを自社開発したことは、まだまだ欧州や日本の市場で勝負するんだという意志の表明で、「我々は欧州向けのブランドだ!(ドイツ勢に負けない!)」と高らかに宣言しているかのようです。

  自動車産業を「国策」としているドイツ政府に手厚く庇護されて、VW、メルセデス、BMWのドイツ3大グループが欧州で著しく台頭する一方で、それに対抗すべく非ドイツ系のブランドを結集したフォードによって、アストンマーティン、ランドローバー、ジャガー、ボルボ、マツダにはそれぞれ最先端で戦うだけの技術力が与えられました。技術自慢の「ボルボ」「マツダ」「欧州フォード」がそれぞれに競って新型シャシーやエンジンを開発して最も優れたものを採用したわけですから、VW、ホンダ、PSAといったFFシャシーが得意な巨大メーカーとも十分対等に渡り合える高性能な設計が、それぞれのブランドで共用されました。

  2000年代の10年間で得た技術ベースを元に、次世代をしっかりと見据えたクリーンディーゼルを搭載して、ドイツ勢と戦うという段取りには、マツダ、ジャガー、ボルボもそれぞれに十分に自信をもっているようです。マツダのディーゼルユニットはエンジンそのものが大きく脚光を浴びていますが、旧フォード時代に熟成された技術基盤があったからこそ、新型エンジンを生かしたクルマ作りが可能だったと言えます。ガソリンと比べてエンジンの重量が嵩む上、トルクが溢れ出るディーゼルを積んでも、非常にタイトでまとまった走りを見せるためには、「足回り」「電動ステアリング」「シャシー&エンジンマウント」といった基幹技術がしっかりしているマツダだからこそのディーゼルエンジンでの成功だったと思います。

  旧フォード陣営から発売される昨今の新型車に共通する特徴として、「足回り」のキャラクターの使い分けの上手さと、「電動ステアリング」の熟成度の高さが挙げられます。例えば先代モデルから、サスペンションの形式を変更して登場してきた新型マスタングは、驚くほどにキャラの立った乗り味に仕上がっていて、アメ車だと思ってバカにして試乗すると完全に足元をすくわれます。そしてさらに強烈なインパクトを与えるのが、BMWやメルセデスを全く寄せ付けないほどに進んでいる電動ステアの熟成具合です。カーメディアを見る限りでは、この「新興勢力」に対して「落ち着きがない」などまだまだ警戒感を露にしていますが、現実には予想を大幅に上回る受注でフォードディーラーも大賑わいが続いています。スタイリングに何となく惹かれて試してみたら「楽しくて!ぶったまげた!」といったところが、購入を決めた人の率直な感想だと思います。

  もちろんハンドリングや足回りといっても、いろいろな特性があるもので、例えば高速道路のレーンチェンジでいかに安定して「カニ走り」を見せるか?という基準ではマスタングよりもBMWやレクサスのMスポ・Fスポの方が機動性は高いわけですが・・・。それでも今回のフルモデルチェンジで、クルマの方向性を大きく変えているにも関わらず、いきなりBMWやレクサスといった「高いハードル」を難なく超えて、日本のクルマ好きのハートをガッチリと射止めるだけの懐の深い乗り味を見せつけたわけですから、「フォード」の実力が日本のユーザーに伝わる良い契機となったかもしれません。

  さてディーゼルを新搭載して日本にも上陸することになったボルボですが、このディーゼルと入れ替わりで、世界でも珍しい「横置き直6ターボ」が姿を消すことになりました。このエンジンを使っていた「S60T6」という最上級モデルに加えて、ポールスターというチューナーによる「S60T6ポールスター」というコンプリートモデルもありました。実際にこの限定モデルは乗ったことがないので恐縮ですが、ボルボの高い水準にある足回りがベースになっていることから、BMWのM3/M4に匹敵するような本格チューンにも関わらず、街乗りでも十分に乗り心地が確保されると絶賛されています。ちなみにトヨタ系列のデンソー&アイシンAWがボルボと組んで仕上げた「T5」ユニット搭載モデルは、ハッキリ言って縦置きのアウディA4も横置きのアウディA3も全く付け入る隙が無いほどに乗り心地が良かったです(アイシンAWの8ATに依るところも大きい?)。

  ちょっと失礼かもしれないですが、メルセデスCLAに直4ディーゼルターボを搭載したとしたら、あの貧弱な足回りでディーゼルの振動を抑え込むことができるのでしょうか? そして軽量なガソリンエンジンでもヘナヘナと拙いフィールを見せてしまっているあの未完成過ぎる電動ステアリングで、どう頑張ってもディーゼル搭載でさらに鼻先が重くなった車体をスムーズに操縦できるとはとても思えません。

  さらにBMW320dですら「落第」気味といえる「静音性」においても、CLAの安っぽい車体で一体どうやってクリアするのか見当がつきません(静かになるイメージが湧かない)。個人的にCLAのスタイリングには全く魅力を感じないのですが、日本市場ではCLAのデザインがそこそこ注目されているようで、メルセデスをインポート1位に押し上げる原動力にもなっているようです。それ故にこのCLAにディーゼルが載せられれば、大ヒット間違い無し!と素人にもわかるのですけどね・・・。

  一方で、ボルボS60には注目を集めるための「デザイン力」が不足しています。マツダの前田育男、ジャガーのイアン・カラムに匹敵するような才能あふれるデザイン・チーフディレクターをヘッドハンティングしてくる必要がありそうです。「クルマ」「エンジン」「デザイン」の三拍子揃ったマツダとジャガーが、メルセデスやBMWを一気に撃破しそうな雰囲気を出してますが、同じ旧フォード陣営の中でも随一の乗り味を誇るとされるボルボもぜひこの「波」に乗っていきたいところですね。せっかく用意したディーゼルユニットにジャガー(ZF8AT)やマツダ(内製6AT/6MT)に対しても優位に立てる、アイシンAWの8ATを採用したわけですから、注目を集めるスタイリングが欲しいところだと思います。


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2015年7月14日火曜日

ジャガーXEの試乗車がまだまだやってこない・・・で3シリーズってのは。

  ジャガー「XE」の各グレード価格がいよいよ発表になりました。・・・ということはそろそろ試乗車がやってくる!!!と思ったのですが、比較的近くにあるディーラーで関東地区で最初の特別内覧会を開催!という段階だそうで、まだまだ先になりそうです。夏休みの間にゆっくり考えてね!くらいに考えているのでしょうか? 日本と同時にジャガーが拡販を狙うアメリカでは9月が年度始めだということで、毎年新車の売れ行きも伸びるようですが、どうやらそちらに優先的に試乗車が回されていて、日本は後回しなのかもしれません。ジャガーは「XE」に続いて「F-PACE」という初のSUVモデルの投入も決まっているようで内部では調整に大忙しといったところかもしれません。

  前々回からまだ試乗すらしていないジャガーXEのスペックからその性能を予測し、その圧倒的なまでの実力の前に、既存勢力・・・輸入車Dセグの雄「BMW3シリーズ」はどうやって対抗するのか? そんな結構メチャクチャなことばかり考えて毎日楽しく過ごしています。ジャガーにはマーケティングに秀でた経営陣がいるようで、ラグジュアリースポーツ、Dセグ、ラグジュアリーSUVと、ライバル関係が手薄なところを上手く突いてきていますし、F-typeもそうでしたが、BMWくらいなら手の届く日本の庶民に、もはやBMWでは満足できないような「グラマラス」なカー・ライフを夢見させてくれます。

  BMWファンには耳が痛いでしょうが、スペックで見る限りではジャガーXEは現行の3シリーズの設計をことごとく理想的なものに置き換えたような輝きがあります。手前勝手なことを言うと、BMWが3シリーズを十分に納得できるクルマに仕上げて500万円〜の価格で商売するなら、特に何の問題もないのです。もしそうならばジャガーXEなんて不要ですし、一体何が楽しくてインド資本のメーカーが単独でこしらえた新設計シャシーの第一号車に過剰なまでの期待などするでしょうか? 

  しかし現実は大きく違います。E90系以来全くといっていいほど、「所有欲マインド」に響かないクルマになり果ててしまっている3シリーズに、ジャガーXEが制裁・天誅を加えるという「テロ」によって、閉塞感しかないDセグに新たな地平が切り開かれることを何よりも先に望んでいます!(それが偽り無き気持ちです!)。そして来るべきジャガーXEのスペックにはその期待に十分応えてくれるだけの、大いなる理想がしっかりと盛り込まれています。特に3シリーズが絶望的につまらない!などと言うつもりはないですけど、3シリーズにお灸が据えられることに、BMWファンをも含むであろう多くのセダン好きがなんとも不思議なカタルシスを感じているのではないでしょうか。

  先ほど乱暴にぶち上げたE90/F30の3シリーズの迷走についてもう少し具体的に説明します。E90系以来BMWはある種のマーケティングに基づき、3シリーズを本来の運動性能に重きを置くスポーツセダンから脱却させ、プレミアムカーとしての自信を深めること(乗り心地や静粛性)についての改良を進めた結果、出来上がったのがまさか!?の「クラウン/マークX互換機」だった・・・という話です。もちろんセールス面ではトヨタ的なマーケティングに沿ったプロダクトで上手くトヨタのシェアに切り込み、日本で3シリーズの最高売上記録を作ったわけですから成功なのだと思います。

  特にトヨタのプログレ/プレビスのユーザーから見れば、アルテッツァ上がりのレクサスISよりも3シリーズの方がより違和感もなく納得出来たはずです。しかしその時点で3シリーズはマークXやスカイラインに乗る現役世代に背を向け、プログレ/プレビスからサイ/レクサスHSへの乗り換えに応じなかった高齢者をターゲットにしたクルマだったので、乗り心地を重視したフニャフニャの足へと急展開することも必然だったと言えます(現役世代からはMスポでオプション料を稼ぐという戦略?)。

  しかしここまで大胆に既存ユーザーを裏切り、大量に引退する団塊世代の退職金を狙おうという試みには、当然ながら手痛いしっぺ返しがあります。もはや「団塊世代が乗ってますよ!」的なイメージがびっしり付いた「3シリーズ」というブランドに、トレンドに敏感な情報化社会に生きる若者達が再び群がることはないでしょう。もはや彼らにとってBMWはヤマハやカワサキのライバルブランドくらいにしか認識されていません。若者の認識の中では4輪のBMWはもはや過去の存在です。いまやどこでもコミコミで100万円もしない中古のE90が売れ残って溢れている現状からわかるのは、このクルマは現代の若者にとってはゴミとは言わないまでも、BMWなのになぜか「楽しくない」「かっこ悪い」「モテない」と受け止められているからです。

  なんでこんな「お粗末」なクルマがいつまでもDセグの基準車として崇められるのでしょうか? 確かにE46は世界中からフォロワーが生まれる名車だったのは認めますけど、その「後継車」というだけで多くの無知蒙昧な人々が何も考えずに買ったわけです。E90がさらに立派な車体になって、「高級車」であることを主張するデザインになったF30系は、BMWの狙い通りに東アジア市場で大人気となり、中国や韓国でかなりの数の賞を獲ったそうです。「世界の工場」となり無駄に購買力を持った東アジア市場のユーザーが、無批判に買い漁った結果・・・その歪んだマーケットに甘やかされて、本来のBMWの「軸」は大いに狂い出し、2000年代のわずか10年あまりでその権威はかなりの所まで堕ちました(人によって意見は違うでしょうけど)。

  BMWの迷走がもしなかったならば、メルセデスに復活のチャンスが与えられることはなく、アウディやレクサスが予想外に順調な成長を遂げることもなかったかも知れません。そう考えると結果オーライの面もありますが、やはりDセグ全体にとってはそれ以上に大きな弊害がありました。その一つがE90/F30を通じてBMWがやたらと自ブランドのアイデンティティとして拘ったポイントである「車体剛性」の高さです。このBMWのスタンスに疑問を提起することなく、「車体剛性=是」と安直に結論したジャーナリスト連中はあまりにも知性が欠如していて、その資質に問題があったと言わざるを得ません。彼らはちょっと小賢しい日本車を絞め上げる(貶める)ためには、特に考えることもなく3シリーズを比較対象にして「車体剛性が足りない!」と結論してしまえばOKという、とてもプロとは思えない安易なジャーナリズムに終始しました。そしてそれを鵜呑みにする輸入車大好きなクズがたくさんいたわけです。まあフェアに考えてこのことが日本のクルマ文化を衰退させた一因でないか?と思うわけです。

  福野礼一郎氏といった業界ナンバー1の良識派と思われる評論家ですら、3シリーズのどうでもいい車体剛性を基準に日本車を片付けている例があるくらいです(黒歴史・クルマ評論2014の100ページ!)。カーメディアが悪いのか?無批判に買った人が悪いのか?BMWが悪いのか?もしくはその他のブランドのやる気の無さが悪いのか?まあそれら全部が悪い方に作用して、セダンの注目度はみるみる下がっていったことは間違いないです。当然のように沸き起こる「セダンはダサい!」という意見に、SUVやミニバン買うヤツはクルマが解っていない!とアホみたいな反論に終始する「コミュ障」気味な態度がクルマ関係の掲示板にやたらと横行してました(今でも!)。

  しかし何度もいいますが、E90/F30は一体どこをドライブしたら楽しく乗れるのでしょうか?全く見当もつかないです。六本木ヒルズの地下駐車場なんて絶対に足を踏み入れられないですし、軽井沢を走っても周囲から見下されるでしょうし、郊外のイオンの駐車場ですら「老人用BMW・・・」とバカにされます。いくら車体剛性が優れていようとも「運転していて恥ずかしい」クルマというのは全く救いようがありません。同時代のクルマとして、トヨタのハリアーの方がよっぽど品格があってユーザーも健全に見えます。そしてセダンは全部ダメか?というとそうではなく、やはり同時代のインスパイアやディアマンテなどは、とてもスマートでかつ男らしく見えます!2015年の今でもこの2台なら買い換えすることもなく十分に楽しめたのではないでしょうか?

  現実問題としてE90/F30だけでなく、「V35/V36スカイライン」、現行の「レクサスIS」でもデートに行けますか?という話です。E90はこれらのフォロワーを生みましたが、結論としてどの一つも完成度は極めて低いです。評論家に酷評されて全く売れないと困るので、何も考えずに車体剛性を無理矢理引き上げます。当然の事ながら、乗り味はセダンらしい優雅なものから大きく離れ、戦車みたいなゴツゴツしたフィールに変わるのですが、それを一生懸命にセッティングで抑え込む(隠す)という不毛なクルマ作りの果てに一体誰が得をしたと言うのでしょうか? 実際にE90を駆逐することに成功したV35/V36は素晴らしいですし、そこに注がれた日産の「意地」には多少なりとも感情移入していまいますが、2015年現在の視点で見た時に、BMWと評論家の愚かなまでのミスリードである「車体剛性・絶対論」にまんまと乗せられた愚かさをクルマ全体から感じてしまいます。

  2年前に発売された現行レクサスIS・・・。F30と同じ方向性のままにベンチマークを超えるという仕事の確かさは評価できますけど、前回も指摘しましたがオリジナルなアイディアがゼロ!でした。その半年後に登場したV37スカイラインは、3シリーズの株が大暴落していて、もはやベンチマークする価値など無い!と見抜いたようで、有名ブランドのEセグに対抗出来るようなクルマへと脱却しました。いまではF10系5シリーズやレクサスGSがライバルとなっています。さて相変わらずレクサスISは3シリーズを追従しているようですけど、スカイライン、アテンザ、CクラスといったDセグは3シリーズとは別離する道を選びました(それぞれの評価はどうあれ)。そして宙ぶらりんのままフワフワと漂う3シリーズとレクサスISを誅殺する「破壊者」としてジャガーXEそしてアルファロメオ・ジュリアがデビューの時を待っています。「アルミのジャガー」と「カーボンのアルファ」が参戦しても、まだまだ「車体剛性が・・・」なんて言っている評論家はいないとは思いますが・・・。


  追伸:現行3シリーズは、クラウンやマークXに比べれば、それなりに興味深いクルマではあります。本文の中では「裸の王様」のように描かれていますが、BMWにはジャガーXEやアルファロメオ・ジュリアを弾き飛ばすような大刷新を期待していることを付け加えさせて頂きます。

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↓なかなか熱いマセラティ本が出ました!

  

2015年6月24日水曜日

ジャガーXE が冷め切ったDセグセダン市場を・・・の続き

  前回に引き続きまだ見ぬ「ジャガーXE」の素晴らしさを完全に想像して書いてみるという、なかなかシュールな内容でいきたいと思います。といっても薄々はお気づきかもしれないですが、各メーカーの現行Dセグセダンのどこが「冷めている」のかについて解き明かすのが裏テーマとなっています。ここ数年でグルーバルでの戦闘力を一段と増したと言われる日本車のDセグですが、結局のところ国内では本体価格の高騰がネックになって、2015年に突入しても相変わらず国内のセダンの販売が不調のままです。スカイラインやアテンザはそこそこ健闘していて、輸入車ユーザーを上手く取り込んでいるという意見もありますが、この2台に関してはサイズを拡大して接近したEセグ市場からの乗り換えユーザーを上手く吸い上げたというのが正直なところです。

  ちなみに現在のEセグは悲惨なまでの「超氷河期」で、Eクラス、5シリーズ、A6、GS、フーガとどれも突破口を見出せないままにモデルサイクルが終焉する時(FMCの時)を待っています。現行モデルが揃って元気が無い理由は、やはりやみくもなダウンサイジングによって、商品価値をことごとく破壊されてしまったことが大きいようです。ドイツ勢はどれも2L直4ガソリンターボの非力さと騒音で、高級車としての本質が大きく揺らいでますし、GSやフーガのベースモデルは国内専用のV6の2.5Lという「化石エンジン」です。どちらもまもなく直4ターボへの置き換えが進むようですが、現行の2.5Lの6気筒エンジンなんて、トヨタ、日産以外では中国メーカーしか使ってないです。この可もなく不可もなくといったつまらないエンジンのクルマが、乗り出しで軽く600万円を超えるわけですから、「なんで売れないの?」とメーカーが嘆くのは少々ナンセンスです。

  ベースエンジンがダメなら、上級モデルにすればいいわけですが、ドイツ勢だと6気筒搭載は乗り出し価格がおよそ900万円。GSとフーガなら700万円になります。これではポルシェ・ボクスター(700万円~)に予約が殺到する理由がなんとなくわかりますよね。ある程度立派に見えるセダンを買ってやろうと、意気込んで見積もってみたらとんでもない金額になって、どうせだったら思いっきり走れるスポーツカー買って楽しもう!ってなることもあるでしょう。さらにEセグは馬力さえ与えれば「直線番長」にはなれるでしょうけど、どうやっても機敏にはならないハンドリングには大きなマイナスイメージがあり、そのおかげで一気にスポーツカー(ボクスター)への情熱が駆り立てられそうですね。

  しかしDセグはというと、スポーツカーの頂点と言えるポルシェ911を撃ち落とすかのように、颯爽と登場した歴史を持つプリンス「スカイラインGT」が輩出されたスポーツセダンの王道セグメントです。確かにスカイラインはこのセグメント内では異端的存在ですが、BMW3シリーズをお手本にしていろいろなブランドから機動力を高めたモデルが発売されていて独自の進化を遂げてきました。しかし気がつけばどのブランドのモデルも、コンセプトの狙いはいつのまにか「Eセグ互換仕様」になってしまっています。その中でもいろいろなタイプがあるのですが、どれもこれももはや「Dセグ」ではない!と憤慨し、一抹の淋しさを感じる今日この頃です。

  まずスカイラインですが、「350GT」というハイブリッド車に関しては、Eセグ高性能車並みの直線番長っぷり(0-100km/hが5.6秒はスゴい)で、本体価格450万円ですから実に価値ある1台ではあると思います。そしてスカイラインの名に相応しい「ステアバイワイア」の実用化も十分に評価できます。しかし問題はそこから先で、まずクルマのキャラに合わない内装がお仕着せられていて、いかにも「プレミアムカーですよ!」という合理化意識が先走っています。そして当たり前のようにランフラットタイヤ装着がされ、ドライバーズカーという本質を放棄し、治安が悪い地域でのセキュリティーカーへと目線を変えた設計にスカイラインという車名はやはり違和感が・・・。やはり世間で巻き起こった批判の通り、日本のユーザーが不在のままコンセプトが完遂してしまった感は否めません。

  そしてアテンザは・・・というと、現行モデルになってから残念なことにCセグであるアクセラの「ストレッチ版」の設計になってしまいました。Cセグのシャシーを伸ばしてEセグの代替需要を満たしてしまうあたりが、マツダの上手いところではあるのですが・・・。そもそも安定志向のハンドリングを持つクルマが揃うEセグ市場に、ストレッチ版のアクセラみたいなクルマを潜りこませれば、「アテンザのハンドリングはこのクラスにはクイック過ぎる!」なんて感想が複数の有名ライターから出てくるのも当然のことです。

  しかしアクセラ譲りのストラットでは超一流のリニアなハンドリングとはいかず、さらに言えば初代・二代目のアテンザが世界を驚愕させたあのリニアなハンドリングからはいくらか「退化」してしまっています。もちろんハンドリングばかりがクルマの価値ではありません。そこで改めてこのGJアテンザの売りは何なのか?・・・「デザイン」「ディーゼル」「MT」・・・この辺を上手く組み合わせて理解してくれ!ってところでしょうか。ユーザーへ丸投げですか? マツダは頑張っていると思いますけど、現行アテンザの「部分最適化」主義はどうも気になります。やはり「アテンザ」と名乗るのであれば、大きくまとまった世界感と常に「世界最高」を意識させるクルマであってほしいです
(前述のスカイラインには気概を感じますが・・・)。

  レクサスISはどうか? 失礼を承知で言わせてもらうと、「最高の材料があるのにシェフが凡人か小者・・・」全体としては悪くはないですし、相対的に見ても随所に優れた点が見られますけど、各部の設計から乗り味に至るまで決定的にオリジナリティが無いです。なんかに似てる!と気がついてしまったらもうダメですね。期待して乗っても残念ながら「独特の世界観」なんてものは何も見えてきません。まずドアを開けたときの質感からしてF30系3シリーズの雰囲気がプンプンします。これで「お〜ビーエムじゃん!」って喜んでくれる福野礼一朗さんみたいなオッサンキャラならいいでしょうけど、私は「レクサスって何なんだよ・・・」とテンションがガタ落ちでした。

  それでもレクサスが自ら「頑張りました!」と胸を張るだけあって、シャシーとそれに据え付けられているインパネフレームやシートなどのガッチリ感は、最近のドイツ車には感じられないくらいに立派なもので、これだけでも十分に価値はあります!がしかし・・・このガッチリしたシャシーから連想してしまうのが、今度はスカイラインです。もっと「柔」なイメージがレクサスにはあったのですけど、今度のISは石畳みたいな舗装路を走らせたら、突如として歴代スカイラインの乗り心地が甦ります・・・なんじゃこりゃ?

  最後にレガシィB4ですが、このクルマはデビューの最初からやらかしてしまいました。アメリカで先行して公開されたのですが、プレス発表会でやたらと派手な演出のあとに登場してきた実車を見たメディアの人々が、あまりの華の無さにポカンとしちゃってました。21世紀にもなってアメリカ人にバカにされるデザインはキツいです。日本車の恥さらしです!そんなクルマに400万円も払えるか?スバルは思いっきり反省しろ!絶好調すぎて生産能力が限界を迎えているスバルだそうで、北米市場でここ数年での成長は目覚ましく3年前までダブルスコアを付けられていたVW/アウディを見事に逆転しました。しかし気がつけばアメリカにまだまだ地盤が無いはずのマツダのアテンザにレガシィB4があっさり負けてる!どうやらマジでアメリカ人はレガシィがダサい!と判断したようですね・・・。このブランドはDセグセダンに関してはド素人!プライドがない! ・・・とまあ厳しく言ってみましたけど、それでもドイツ車のDセグ買うくらいならレガシィB4にしておきます。

  400万円のクルマの水準から見れば不満はあるけど、やはりスバルのフラッグシップセダンだけあって、各部の作り込みは申し分がありません。田舎のお袋さんを乗せるのには、いろいろと「ちょうど良い」クルマになってます。1500mmを超える車高はややシルエットを悪化させますが、後席の乗り込みやすさは◎ですし、リアシートヒーターが標準装備。地味だけど堅実なデザインは、「清潔感」の裏返しですし。親孝行のクルマにはいいと思います。自慢のAWDを発揮して、雪深い温泉宿にでも連れていってあげましょう。ただし400万円と聞くとお袋さんも困惑するかもしれないですが・・・。

  さてこんな調子でDセグ全部を血祭りに挙げて行きたいと思います。次回はドイツ車を語り尽くされたステレオタイプな表現で、改めてコケにしていきたいと思います。


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↓Dセグ特集!渡辺敏史さんがアテンザ・スカイライン・IS・レガシィをバッサリ!
だけど異論あり!

  

  

  

2015年6月16日火曜日

ジャガーXE が退屈なDセグセダン市場をぶっ潰す!

  ジャガーXEにはまだ乗ってません! けれどもなんかとってもいい雰囲気の情報が次々と入ってきています。「オマエの想像なんてどうでもいい!」という人は時間のムダなので、どうぞページを閉じて退場してください。このあと延々と「想像」しか出てこない退屈極まりない話で恐縮ですが、「ジャガーXEがセダンのあり方を再定義してくれるであろう展望」について飽きるまで語ります。一応、私なりには「これ」を語る意義が十分にあると感じているのですが、実際のところ家族や親しい人、そしてクルマ好きの友人に対してさえ話すのは、少々気が引けるくらいに私自身が「想い」が強過ぎるんですよね。まあブログってとっても便利だなって改めて思います。

  まだ見ぬジャガーXEに過剰な期待をかける理由はいくつもあります。既に公表されているデザインがなかなか渋くて素晴らしいとか、海外で試乗したカーメディアの反応が一様に好意的とか、そういうのは全くもって関係ないです。7月号のモーターマガジンで、超有名ライターの島下さんがレビューを書いていらっしゃいましたが、これを読んだ時に失礼極まりないですが、あまりにも私の想像通りの内容に、寒気がするほどに変な「デジャブ感」を覚えたくらいです。ジャガーが相当早くに新型セダン「XE」の設計上の概要について情報を出していましたが、この段階ですでにかなりのイメージが固まっていました。インスピレーションというヤツでしょうか。このXE開発の3本の柱といえる「アルミ」「サス」「エンジン」の内容を聞いたとき、ジャガーの開発にはとんでもない「カーガイ」が関与していて、そしてこのクルマが期待通りに作られ何年後かにこれを絶賛している自分の姿がありありと浮かびました。

  先ほども述べましたが、島下さんのレポートもまるで夢遊病のまま海外まで行って乗ってきた自分が書いた!かのような内容でした。3シリーズを初めとするDセグセダンの主流派をみんなまとめて引っくり返すクルマが現れるとしたらこのXEだ!みたいな内容だったと記憶しますが、なぜこのレビューに「乗ってもいない」自分が、これほど病的なまでに「絶対にそうだ!」と思うのか・・・なんだか自分でも怖いくらいですが、そういう確信ってしばしばありますよね?。私はこれまでジャガーのオーナーになったこともありませんし、このブランドのクルマを運転した機会はわずかに2回(しかも数分)ですので、ジャガーに対する個人的な信頼感「ジャガーならいいクルマだろう!」というのはほぼゼロに近いです。もっとも所有しているマツダであっても、今ではそんな「信頼感」はまったくといっていいほど無いですけど。

  ジャガーの何を信じられる?と言われたら、「現在の不遇な状況」と即答したいです。端的に言うと今のジャガーは間違いなく「名車」が生まれてきやすい環境だと言えます。ジャガー・ランドローバー(J&L)は現在はインドの自動車メーカー「タタ」の傘下にあります。「タタ」はインドでは一番有名なメーカーですが、本国インドの市場では台数ベースでスズキに負けてしまうほどで、北米、中国の2大市場にも「J&L」以外の展開は出来ていません。新興国の成長メーカーとはいえ、グローバルではまだまだトップ10グループ(VW、トヨタ、GM、ルノ日産、ヒュンダイキア、フォード、フィアットクライスラ、PSA、ホンダ、スズキ)にはほど遠いですし、その下にひしめくBMW、メルセデス、マツダ、スバルと成長著しい中国勢からも遅れをとっている規模に過ぎません。

  それでも窮地のJ&Lに手を差し伸べた「タタ」は、カネは出すけど口は出さない主義のようで、少々の開発ソースを得て復活を期すジャガーが真っ先に手掛けたのが、意外なことにピュアスポーツの「Fタイプ」でした。「何故?」という周囲の戸惑いをよそに、クルマ自体は予想をはるかに上回る意欲的な設計と価格設定によって、ラグジュアリーカー市場に旋風を巻き起こす存在になっています。欧州・北米では大型セダンのシェアをまだまだ少なからず持っているので、ブランドイメージを盛り上げるために新型スポーツの「Fタイプ」を作って「ジャガー復興」をアピールする狙いがあるようです。このクルマの販売戦略は関しても、顧客リストのXJユーザーのお金持ちに対して、「セカンドカーにFタイプどうですか?」と持ちかけることができるので、J&Lよりも経営基盤がしっかりしている日本メーカーが作るよりも、販売に関してはいくらかハードルが低かったと推測できます。

  今回はさらにブランドの裾野を広げるべくXEの開発を行いました。世界のほとんどのブランドにとっては、「Fタイプ」(専用設計スポーツ)の前に「XE」(中型セダン)を作るのが全くのセオリーなのですが、先述の通り「特殊」なブランドであるジャガーにとっては順序は逆のようです。つまりジャガーはBMWやレクサスというよりも、フェラーリやアストンマーティンのような特殊なブランドアイデンティティを持っているということです。そしてジャガーにとってはDセグセダンの展開こそが、ライバル関係を考えると非常にハードルが高いとも言えます。フォード傘下時代にモンデオとの共通設計の「Xタイプ」くらいしか経験の無いDセグセダンに、自前の新開発のFRシャシーで挑むという計画の裏には、経営陣にそういう決定をさせるだけの強烈な個性の「作り手」の存在があるのでは?と思うのです(少々飛躍がありますがご了承を)。

  「ブランド存続の危機」に瀕した自動車メーカーにはしばしば「偉大な設計者」が生まれます。奇才・天才の類いが最も活躍しやすいのが「ピンチの局面」というのは自動車業界に限った話ではないですけど。今のジャガーと同じような境遇に置かれていたのが、12年くらい前の日産とマツダでしょうか。ご存知のようにミニバン&コンパクトカーに国内市場を席巻され、海外市場でもこれといったヒット車を出せていなかった両メーカーは赤字転落からの再建の目処が全く立たずに、「技術力」を手土産にそれぞれルノーとフォードに身売りしていました。今でこそ第二次産業の「勝ち組」として日本の自動車各社は確固たる基盤と将来に渡っての技術革新への道筋を持っていますが、当時の自動車産業は「淘汰が避けられない」完全な斜陽と見做されていました。日本にはまだレクサスは無く、バブル気分が抜け切らない多くの日本人の感覚からしたら日本車のポジションは完全に輸入車の「下」そんな時代でした。誰がここから日産とマツダの復活を予測できたでしょうか?

  現在のジャガーに対する、世界の人々の認識も同じようなもので、フォードの古いシャシーを使って作られるフラッグシップサルーン「XJ」が、レクサスLS、Sクラス、クワトロポルテ、パナメーラといった超一流の高級サルーンに全く引けを取らない!と感じるクルマ好きは相対的に少ないと思います。いくら英国王室御用達だといっても、今のジャガーにレクサスやメルセデスと互角にやり合う基礎体力は無さそうですし、このクラスのクルマですら自前でシャシーが開発できないという哀れな状況です。しかも実際に運転してみるとやはり「遮音」「スペシャル感の無いアシやハンドリング」「内装」などなど・・・あれこれと「格差」が出てきます(もちろん一定の高級感はありますけど)。

  XJやXFのシャシーがすでに耐用年数を超えているのに、シェアを持っていないDセグに先に新開発シャシーを投入してくる戦略は、まさに「捨て身」と言えます。価格設定がよりシビアになるDセグで、長年作ってきて強固なシェアを持つ老舗に勝負を挑む・・・「玉砕」すらチラつく中での狂気的な「督戦」。そんなシチュエーションがどことなく先ほどの日産やマツダと被ります。今さら言うまでもないことですが、「V35スカイライン」で北米プレミアム市場に血路を切り開いた日産と、「GGアテンザ」で欧州を驚愕させたマツダには、それぞれ水野和敏、金井誠太という生え抜きの「天才的指揮官」がいました。そしてどちらも掲げた目標は「世界一のクルマをつくる」(=E46BMW3シリーズを倒す!)でした。

  日産もマツダも周囲の冷ややかな評価を覆す目覚ましい成果を挙げたわけですが、ちょっと口惜しいことに、この事実を日本の底意地悪いカーメディアどもがこの事実を積極的に報道せずにむしろ黙殺したこともあり、日本のクルマ好きでもこの偉業を知らない人が結構いるようです。先日もルマンで日本勢が完敗すると「日本車がドイツ車に勝てるわけがない」とか言い出す人々が続出していました。もちろんポルシェやアウディを批判するつもりはないですけど、湿気が多い日本やシンガポールで開催されたら全然違う結果じゃねーの?って気もしますが・・・。さてジャガーに対する期待がどこから生まれてきたかについて、少しくらいは伝えられたかなと思いますが、まだまだ言い足りないので、続きは次回にしたいと思います。ここまで「妄想」にお付き合い頂きありがとうございます。

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2015年6月7日日曜日

BMW3シリーズがマイナーチェンジだそうで・・・

  BMWの「330i」と聞けば、普通なら直列6気筒のモデルだと何の疑いもなく思いますよね。今回のマイナーチェンジで330iは直4ターボになるそうですが、果たして下2桁の「30」は具体的に何を表しているんですかね?「馬力」?「トルク」?「価格」?これはBMWマニアでも簡単には説明できない「BMW進法」です。この表記が分り易いという人もいるのかもしれないですが、同じエンジンを使った3シリと5シリでも数字が違ったりすると、何だかブランドの名声に相応しくない「虚偽的」な情報発信ではないかという気が・・・。何でドイツプレミアム車(あとレクサスと日産も)は「数字」に拘るのでしょうか。318i〜340iまでずらりと用意されれば、私のような小心者は340iを買わなければ!という強迫観念の「カモ」にされている被害者意識から、あまりマトモに購入を検討できないでいます(日本にはセダンの340iは無いみたいですが)。

  決してダメなクルマじゃないことは判るんですけど、このブランドの販売戦略には無意識の内にどうも嫌悪感がありまして、結局のところどう間違っても買わないクルマになってしまい、選択肢が自動的に減っているのがなんだか口惜しいです。噂によると最近では値引きがなかなかスゴいことになっていて、アテンザXDのLパケをマトモに買うくらいなら、320dの方が安く手に入るみたいですね(もちろん新車です)。ここまでお手軽ならば、ちょっと試してみようか?という気分に度々なるのですが、乗りに行って素直に感じられるのは、「さすがBMW!スムーズだ!」と「やっぱりブランドの下流だな・・・」という背反で、結局はプラマイゼロな印象です(決してトータルマイナスではないですけど)。そしてやっぱりドイツ車・ドイツブランドは日本のクルマとは全く文化が違うんだなと改めて思うわけです。

  日本ブランドにとってのセダン(このブログでターゲットとするクラスのもの)は、あくまで「極上」であることが最低条件です。国産のセダンはどれに乗っても「このクルマはコンパクトカーとは違う!」という悲痛なまでの開発者の意地を感じます。言うまでもないですが、コンパクトカーの2倍以上の販売価格ですから、誰でも簡単に判るレベルの「差別化」を盛り込む必要があります。それはまさに「クラウン/マークⅡ/コロナ/カローラ」の時代から日本メーカーのセダン開発に染み込んできたDNAです。当然にBMWやメルセデスにもさらにシビアなブランド内ヒエラルキーが存在しますから、「差別化」という意識はあります。しかしメルセデスやBMWがこれまで歩んできた背景には、「アウトバーン追越レーン仕様車」という絶対的に不可欠な要素があって、その中で打ち立ててきた「高性能神話」の延長線上でいまもやや高飛車なセダン商売をしているといえます。

  メルセデスやBMWが持つ「特性」の前に実力差を見せつけられた1980・90年代の日本車がどうだったなんて、ハッキリ言って、今カーライフを満喫する人々にとっては別にどうでもいいことなんですけど、自動車評論家や古くからのクルマ好きの皆様のイメージはまだまだ20年前当時のままなんだと感じることも多いです。大変に失礼ですが、世間からみればクルマ好きとは大概はただの「バカ」なので、時代の変化について認識を改めろという方が無理なのかもしれませんが・・・。まあとにかく、「日本車はダメだね〜」みたいな口癖の人はプロ・アマ問わずたくさんいますし、それはまあ仕方のないことなんだと思います。

  2000年代を迎えて、トヨタ以外の普通車はグローバル化が必須となり、当然に日本のセダンにもメルセデスやBMWと同じ「250km/h対応仕様」なる処置がとられるようになりました。まあ簡単に言うとメルセデスやBMWの上級モデルと同じくらいの限界性能を備えたシャシーを当たり前に使っているという話です。現在も欧州で中型車を販売しているトヨタ(レクサス)・日産(インフィニティ)・ホンダ・マツダ・スバルの5メーカー全てがこの水準をクリアしています。こういったごくごく常識的な前提を、なぜか読者に対してひた隠しにして、ドイツ車にはまだまだ及ばない〜!なんてクソ論を展開するライターが困ったことに多いですね(そういう偽善者しか仕事が貰えない世界か?)。

  確かに日本メーカーが「250km/h対応仕様」を取り入れたのは、マツダが初代アテンザ(2003年〜)から、レクサスは現行LS(2006年〜)、GS(2012年〜)、IS(2013年〜)からであり、まだまだメルセデスやBMWに比べれば歴史が浅いです。しかしトヨタがBMWと、日産がメルセデスと、対等な関係での提携を結んでいて、高級セダンにおける共同開発が盛り込まれていることからも、日本勢がすでにメルセデスやBMWと全く同じ土俵に立っていることがわかります。なによりもこれらのクルマを逐一試してみればわかりますが、走行安定性においてドイツ勢に明確なアドバンテージなどは一切なく、結局のところ系列部品メーカーを抱える日本勢の「インテグラル・アーキテクチャ(擦り合わせ)」による高い技術力が目立つ・・・というのが嘘偽りのない評価なんです。

  それでもメルセデスやBMWのコクピットに収まったときに感じる、ブランドのフィロソフィみたいのが好き!という人の感性を否定するつもりは毛頭ありません。確かにCクラスも3シリーズも「コクピット第一主義」とでもいうべき意匠は強く感じます。日本勢がちょっと「弱い」と感じる点がここです。マツダ・アテンザはMCによっていよいよ欧州車への憧れを隠せないインテリアになりましたし、スバル・レガシィはそんなマツダを参考にしている節が多くあります。一方で、スカイラインやISはというと、高い質感を誇ってはいますが、残念ながら「足踏み式サイドブレーキ」のギコギコしたフィールが、完全に世界観をぶっ壊しています。同じくCクラスのコラム式シフトも幾分かブランドイメージを後退させてはいるのですが・・・。インテリアに関してはあくまで素朴な3シリーズが秀逸?なのかもしれません。

  「NVHやハンドル/アクセル/ブレーキのフィール」を絶対視する日本勢と、「コクピット第一主義」のドイツ勢ということで、ユーザーの好き嫌いの問題じゃないか?で終わらせてもいいのですけど、先日読んだ「モーターマガジン7月号」のDセグセダン評があまりにもひどかったので、当該雑誌の主筆を務めるアホなオッサンライターに向けて「放言」したいと思います。現行のCクラスと3シリーズの最大にして決定的な弱点は、完全にドイツ車としてのポリシーが欠落しているところなんですよね。BMWとメルセデスの営業マンにそれぞれ言ったことがありますが、「これって日本車っぽくないですか?」ってことです。フロントデザインの押し出しの強さだったり、想像よりもずっと柔らかいアシ回りだったり、座面の調整幅が日本勢よりも自由度がなく、その分シートが柔らかくて摩擦が少ないものだったり・・・。
 
  Cクラスも3シリーズも期待値が高い分だけ、乗ったあとの感想は「なんか見失っているんじゃないの?」という残念な気持ちです。スカイライン、アテンザ、レガシィはどれももっと乗り味に「個性」があります。この3台はDセグのゾーンを突き破り、Eセグに近いということも、クルマの奥深さがあるという点に影響してはいると思います(安定感などに)。日本勢がめいめい勝手に進化を遂げているのに比べると、Cクラスや3シリーズの進化はハッキリ言ってノロいですし物足りないです(Cクラスなんて出来損ない?)。日本で走るならこのサイズがベストで、エンジンも「必要十分」なもので、多段式ステップATが・・・なんてステレオタイプで「中身」のない評論をあちこちで見かけますが、こんな能天気な文章で納得するのは「クルマに興味ない人々」だけじゃないですかね。さて「モーターマガジン」が一体いつまでCクラスや3シリーズを日本勢の上に置き続けられるか見届けたいと思います。


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↓BMWやメルセデスは日本車の足元にも及ばない!と放言しているプロライターもいますけどね!アテンザ大絶賛!が収録されております!

  

2015年5月22日金曜日

ライバル壊滅で フーガ の刷新がなんとも地味。

  待望の日本復活を果たしたホンダ・レジェンドを盛り上げたいのですが、ホンダがいろいろとゴタゴタしていて、まともなプロモーションもしてもらえてないのが可哀相でなりません。そしてレジェンド再上陸をまるで妨害するかのように、突如として刷新(MC)されて後期型となった2代目フーガですが、こちらもV37スカイラインが予想以上の「大出世」によって、なんとなく存在意義がぼやけてしまった感があります。

  日本仕様のV37スカイラインからは廃止されてしまった大排気量の自然吸気エンジンという選択肢があること以外に、フーガを選ぶ事の必然性が非常に乏しくなったのが少々つらいところです。沢村慎太朗さんが「午前零時の自動車評論9」(最新刊)の中で、輸入車ではEセグセダンの存在意義がどんどん無くなっている!と高らかに宣言されていましたが、この例に漏れず「日産のフラッグシップ」という看板はシーマに譲り、同時にスカイラインのサイズ拡大でライバル(5シリ、E、A6)と同じく居場所を失いつつあるのがフーガかもしれません。

  日産の販売店が近所にあり、土地柄でしょうか割とフーガが売れているようで、店頭にはフーガの現行グレードで即納OKと思われる在庫車がデカデカと値札を付けて常時置いてあります。近くで見ても遠目にみても存在感は抜群ではありますが、オプション込みで400万円台という価格はグラっと来ますが、「欲しいか?」・・・あれこれ考えての結論として、やっぱり少々「情熱が足りない」のを感じてしまいます(250GTでは・・・)。それでももちろんこのクルマが「論外」だなんてことは決してないですし、このクラスでは最も魅力的であることは間違いないです。世界中のどこの市場に持っていっても、相対評価で常にトップを取れるだけのオールマイティな実力があるのはもちろん承知していまし、トヨタの国内専売セダンに匹敵する乗り心地と、グローバルの頂点としてメルセデスからも一定のリードを奪えるという日産の破天荒な飽くなき技術へのこだわりがそのまま形になったクルマです。

  フラッグシップでは絶対に負けは許さない!これは様々な文献から読み取ることができる日産伝統の社是です。カルロス=ゴーンが社長になったときに、各地に散らばる様々な開発部門が、それぞれ好き勝手に世界最高峰を視野に入れた技術を研究するために、予算が青天井になっているのを知って、あまりにクレイジーなコスト感覚の無さに卒倒したらしいです(だから業績改善も楽勝だった?)。わざわざ例を挙げるまでもなく、R35GT-Rではポルシェターボを超えた世界最速にこだわり、スカイラインの北米進出に際しては、わざわざ仕様変更を施したVQ37エンジンを投入してまでライバルのBMWの6気筒ターボを潰しにかかるなど、ルノー傘下になった現在でもその「闘争本能」は全く衰えていません。

  日本では日産はGT-R以外ではあまり「超高性能」を意識させるブランドではないですが、北米市場ではフーガ(インフィニティQ70)の最上級モデルには5.6LのV8自然吸気(420ps)が積まれていて、本体価格もなんと63000ドル〜と一流ラグジュアリーに匹敵します。5シリーズが50000ドル〜でEクラスが52000ドル〜ですからなんとも強気な価格設定がわかると思います。ちなみにアメリカでは旧型Eクラスのシャシーを使った「クライスラー300」とその兄弟車「ダッジ・チャージャー」の5.7LのV8搭載モデルはどちらもわずか32000ドルで手に入ります!・・・これはとっても羨ましいです。ちなみにアメリカではEクラスのV8搭載はAMGのみで10万ドル〜、5シリーズのV8モデル「550i」は65000ドル〜で、「M5」は94000ドル〜となっています。

  北米では「M3」と「RC-F」がおよそ62000ドル〜なので、フーガのV8モデルも日本の価格に直すと1000万円程度になりそうです(並行輸入では現在914万円らしい)。1000万円のフーガなんて日本で売られている姿がなかなか想像できないですが、北米では強気な価格設定でインフィニティのイメージリーダーとしての役割を十分に担っています。日本にインフィニティブランドを本格導入するとなれば、このゴージャスなフーガも投入されるとは思いますが、まだそこまで踏み切れない日産のもどかしさの中で、日本のファンに訴求できる「フーガ」の魅力は、じわりじわりと低下しているのがセダン好きにはちょっと辛いところです。

  もちろんフーガはアメリカを主戦場として開発されたクルマですし、5.6LのV8で420psで彼の地の「プレミアム・マッスルカー」市場に参入することに日産の意識が向いているはずなので、それならば日産が世界とガチンコで闘う「本気」のV8モデルを日本のファンにも売ってほしいものです。すでに日本でもGT-Rを販売しているので、単純にフーガのAWD&V8モデルにツインスクロールターボを組み込んで600psまで過給し、無理矢理に「E63AMG・S・4MATIC」に対抗して最速セダンを目指す必要もないですし、メルセデスは日産の重要なパートナーでもあります。

  しかし「フォード・マスタングV8」「シボレー・カマロV8」「キャデラックCTS-V」といった本場のマッスルカーが日本に今後も入ってくるようなので、これらに対する日本メーカーからの迎撃モデルとして「フーガV8」があると、日本のクルマ文化もなかなか盛り上がるのではないか?という気がします。アメリカから入ってくる素っ気ない「V8モデル」には、沢村さんが言うように魅力を失いつつある日本や欧州ブランドのEセグセダンが、V字回復するための重要なヒントがあるように思うのです。北米ビッグ3といえどもそれほど台数が稼げないFRシャシーに本格的な投資などできず、クライスラーはメルセデスの旧式を使い倒し、フォードもだいぶ経年がたったジャガー用のシャシーを簡素化(コストダウン)したものをマスタングに充当しています。またGMは傘下の豪ホールデンが開発した「ゼータ・シャシー」と2008年からキャデラックで使い始めた「シグマ2シャシー」(シグマのコストダウン版)をこれまで併用していましたが、今後は新設計の「アルファ・シャシー」に統合して、現行のCTS、ATSと次期カマロにも使うようです。

  確かに私は日本車は好きですが、別に日産が誇る「FMシャシー」で武装したフーガが、へなちょこシャシーの北米マッスル勢を迎え撃って格の違いを見せつける!という構図なんて期待していませんし、そんなことで「日本の誇り」を感じる!なんて前近代的な感傷に浸るなんて趣味はもはや卒業しました。シャシーなんてなんでもいいし、未だに80年代的なOHVのエンジンを使っていて、昔ながらのエンジンチューンを楽しむ人々の需要に応えている、アメリカン・クラシカルなV8マッスルに対し、VVEL(可変バルタイ)やDGI(直噴化)をガッツリ組み込んだ「VK56」という全く違う次元にある日本とアメリカの8気筒の乗り比べが出来れば(それぞれに良い点があると思います)、もっともっとクルマの面白さが広がる!なんてのは安易かもしれないですが・・・。まあ日産の英断に期待して待ちましょう。

  
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2015年4月15日水曜日

スカイライン にも NISMOを!

  「セダン専門」のブログと言っておきながら恐縮ですが、スズキから「アルトターボRS」というなかなかの「アイディア商品」が登場しました。もしかしてご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、「アルト」とはスズキの最廉価に位置する軽自動車のシリーズで、昔ながらの小さなキャビンを備えて、軽量で燃費の良さをアピールするクルマで、ライバル車はダイハツ「ミラ」シリーズになります(アルトはマツダにOEMされていて「キャロル」といいます)。その「アルト」のスポーツモデルということでコンセプトは600kg台の軽さを十二分に楽しんでください!といったもののようです。軽自動車ですから64psを守りつつも、最大トルクを10kg・m(3000rpm)まで上げてきました。ちなみにヴィッツの1Lエンジンは最大出力69psで、最大トルク9.4kg・m(4200rpm)で970kgの車体を引っぱりますから・・・ざっくり言うとアルトターボRSは300kg軽くなったヴィッツです。

  さてその秘めたるスペックもなかなかなんですが、代表的なカラーリングとしてカタログやらカーメディアのグラビアやらに登場するのが、高級車を連想させるような「ホワイト」に、ドアミラーやエアロパーツに「レッド」をあしらった配色は、なんだか既視感が・・・。これは!日産系列のNISMO?それとも先日、北米で公開されたマツダの「CX-3」のスポーティな仕様のデザインでは?いやいやメルセデスがFFのAMGチューン車に使っている塗装にも似ている気が・・・。もしよろしければリンク貼っておきますので見てやって下さい⇒「スズキ・アルトターボRS・特別サイト

  スズキの公式声明によると、従来の「アルトワークス」とは違って、スポーツカーではなく実用性の高いハイスペックな軽自動車という位置づけで、「ターボRS」と命名されたそうです。最近のクルマは安全装備満載で車重が増えて、さらに駆動系全てで省エネが推進されているので、やたらと重っくるしいフィールのクルマが多いです。多くのメーカーでは「Sモード」を装備してパワーを出し入れさせたりの工夫はあるようです。そんな中で、最初から「カッコ良い」「速い」「個性」といった点を強調した「特別仕様車」がなかなか売れているようです。人気の理由は街中に溢れ返っている同型モデルと、少しでも差別化しておきたいといった心理みたいで、台数が多く出ているコンパクトカーに多いです。

  日産のスポーツモデルを対象にしたパーツを制作してきたNISMOからも、「コンプリートモデル」が次々と発売されています。NISMOのフラッグシップに位置するGT-R"NISMO"だけでなく、マーチ、ジューク、ノートといった廉価モデルのラインナップを充実する動きが加速しています。もちろん伝統のスポーツモデルであるフェアレディZにも設定があります。NISMOのような系列チューナーによるコンプリートカーはそのメーカーの熱狂的ファンしか興味を示さないものですが、マーチ、ジューク、ノートに関してはお手頃でなかなか興味深い価格設定になっているので、どれくらい売れているかはわかりませんが、一般レベルでの認知が進めばもっと売れてもいいかもしれません。メルセデスAMGのような過激なまでの出力アップこそないものの、特別にチューンされた自然吸気1.6Lで140ps(ベース車は1.2L)、しかも車重がわずか1080kgに抑えられたノートNISMO(224万円)は、例えばVWポロに設定されているどのグレードよりも魅力的だと思うのですが、カーメディアで十分に紹介されていないのが残念です。

  フェアレディZ・NISMOは自然吸気3.7Lをベース車の336psから355psまで引き上げるといった、ポルシェの「GTS』グレードみたいな手法を採っています。ボクスターやケイマン、そして2Lターボで300psオーバーを搾り出して全く余裕がないクルマ(A45AMG)が700万円くらいで売られていてそこそこの人気であることを考えたら、このスペックで600万円以下というだけで「フェアレディZ"NISMO"」には十分に商品価値はあると思います。

  NISMOの守備範囲はスポーツカーとコンパクトカーだけですよ!っていう線引きがあるのかもしれませんが、ここで思い切って「スカイライン"NISMO"」を作ってみてはどうでしょうか? 「HV」で「ステアバイワイア」というだけでNISMOの規模では関与できませんってことなら仕方ないですけど、フェアレディZ"NISMO"のエンジンを積んで、V37に大排気量NAの限定モデルを発売してもらえないですかね。あとはちょっと引っ掛かりが少なめなV37のエクステリアに、オシャレな専用パーツでもドカンと付けてほしいです。しかし存在を主張し過ぎているリア・スポイラーは絶対にNGですけど。

  さらに気になるのが、V37のやたらと「高級車」を意識し過ぎてしまっている内装で、これを「走る気にさせる」アレンジにして欲しいです。もっとスポーティでシンプル、だけど包まれ感だけは逃さないような上質な内装に貼り替えてくれると、さらに「いいクルマ」なんですけどね。かなりド派手に「デコった」センターコンソールを、わざわざ地味なものに変更するのは、メーカーとしてはちょっと受け入れ難いかもしれないですが・・・。でもやっぱり何と言うべきか非常に心苦しいのですけど、とりあえず「画面が多すぎ!」で何かダサいんですよね。なんだかV37の「内装」をディスる内容になってきてしまいましたが、まだまだ言います。ステアリングがやや「シブ過ぎ」なので、もっとクルマの個性が主張できるものにチェンジしたいですね。そんなのは「どっかのショップでやればいい」とか言われそうですが、やはりクルマにかかる費用がやたらと高くなっている昨今では、「新車保証」の期間内は安易に社外パーツへの取り代えは控えたいものです。

  V37スカイラインを買っても、内装を中心にやたらと「オヤジ仕様」が目立つからちょっとな・・・という20代30代40代は多いと思いますよ。しかも内装の選択できる純正オプションは「プレミアムカー」としては、あまりにも少ないのでどうにもできません。内装の基本は確か「ブラック」「ブラウン」「ベージュ」が基調で、とりあえず若々しさを求めてブラックを選ぶとしても、これがあまり気に入らないというか、目を惹かない「華の無い」タイプのブラックです。最近では小型車でもステッチを入れたセンスの良い内装が多いのに、どうもセダンは古めかしいものをわざと使っているかのようです。日産の名誉のために言っておくと、アテンザもレガシィも「ちょっと違うかも?」みたいな違和感はありますが・・・。

  最近のセダンに「内装でもっと楽しませて!」と願う一方で、マーチ"NISMO"の内装を見るとなんだかとっても「いい感じ」なんですよね。このテイストをいまいちパッとしないV37スカイラインに導入すれば、ほどほどにいい感じのコクピットが出来るのでは?と思うのですが・・・。


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2015年1月31日土曜日

レジェンド・アテンザ・レガシィ 日本のセダン天晴れ!

  日本ではセダンが「乗用車の基本形」という立場で見られなくなって久しいです。昔は各メーカーからマーク2・クレスタ・チェイサー・ヴェロッサのように共通設計のいわゆる兄弟車がたくさん出ていましたが、最大手のトヨタを見ても4つの販売チャンネルからそれぞれ違う車名を冠したセダンが出てくるなんてことはなくなりました。またトヨタと日産が国内市場でセダンを重要視していたころは、両メーカーを代表するモデルがやたらと似通っていたのも完全に昔の話で、現行モデルのクラウンとフーガは遠くから見てもハッキリと違いが解ります。トヨタ以外のメーカーのセダンは全てグローバルモデルになっていて、特に高級モデルはドイツ車に負けないような力強いフロントマスクを持つものが増えています。

  トヨタのクラウンも今では完全に中国向けの主力セダンとして生まれ変わっていて、次期MCでは2Lターボ車の発売が噂されています。新たな主戦場となる中国では現地生産されるターボチャージャー搭載の欧州メーカー車が圧倒的な人気を誇っているようで、苦戦する日本メーカーも販売のてこ入れのために何らかの対応が迫られています。日本車と言えば静かなNAエンジンが海外でも高い評価をされてきましたが、中国市場は他のどの主要市場よりも小排気量ターボの人気が高いようです。もはやドイツ・フランスといった極めて合理的な経営をする国々のメーカーでは、中国でいかに稼ぐか?がメーカー存続のために必要で、メーカー群が徒党を組んでステマを展開し、ターボと小型SUVというブームを中国へ持ち込んだ格好です(どちらも儲かる!)。日本勢の勢いは完全に削がれてしまった結果、簡単にまとめるとスタイリッシュな小型SUV・小型セダンでホンダ・スズキ・マツダが勝負し、取り急ぎターボチャージャーを調達してプレミアムカーを売ろうとしているのがトヨタ(レクサス)と日産(インフィニティ)です。

  2Lターボ車なんて全く興味ない!という日本の生粋のセダンユーザーにとっては、中国市場の動向による利益のない影響が日本へと大きく及ぶのは由々しき事態といえます。ほんのつかの間かもしれませんが、そんな人々の溜飲を下げさせてくれるのが、マツダ・アテンザのMCとスバル・レガシィのFMC、そしてホンダ・レジェンドの日本市場復活です。レガシィとレジェンドに関しては北米市場で育まれた背景を持ちますが、ドイツ車のような2Lターボで即席の安っぽい乗り味が作られるのに比べれば、マツダ・スバル・ホンダ(未試乗)が中型・大型のセダンに用いるエンジンもどれも味わい深く、豊かな乗り味が楽しめます。

  やはりセダンは他のボディタイプではなかなか味わえない特別な乗り味を保持して初めて「一流」なんじゃないですかね・・・と生意気なことを言ってしまいますが、やはりゴ◯フと同程度の乗り味のセダンなんてとてもじゃないですが納得できません。現行のゴ◯フが発表されたときに、クラウンのような静音性とか言われてましたが、私の乗った限りでは車体からエンジンのマウントまでクラウンには遠く及んでいませんし、ゴ◯フGTIのボンネットを開けてみるとフードの裏についている遮音材の面積は、アテンザ、レガシィ、クラウンなどに使われているものよりも極端に小さかったです。「自家用車」誌の測定によるとクラウンとゴルフでは2段階くらい静音性のレベルが違ったそうです(もちろん現行クラウンが上です)

  ゴ◯フを作っている某ドイツメーカーはどうやらクラウンの知名度を利用した宣伝を日本のカーメディアに流布したようですが、日本車セダンのユーザーが乗り比べれば、そのステルスマーケティングにはかなりの誇張が含まれることにハッキリと気がつくレベルです。ゴ◯フはたしかにヴィッツやマーチに比べれば質感の良さが実感できますが、それを考えても相当に割高な日本価格が付けられています。クラウンと同じくらい!なんて現行同士で比べたならばとてもじゃないですがあり得ないです。BMW3やアウディA4の水準を追い越した先にクラウンのレベルがあるというのに・・・。余談ですが、ゴ◯フGTIに試乗したあと自分の国産セダンに乗って帰ったときに、改めて愛車の遮音性の高さに感動したほどです。

  確かに廉価なドイツ車にもれなく付いてくるターボチャージャーがウルサイ!なんてことはないのですが、あくまで静音性に関していえは、ドア周りのパッキンがどれくらい念入りに入っているかであるとか、エンジン周りの遮音材をどれだけ使っているかといった基本的な部分がそのクルマの「実力」に大きく関わっています。BW1シリーズのドア周りは見比べるとフィットやマーチ並みに貧弱だったりします。日本車がドイツ車がといった先端技術ではなく、そのメーカーがどれだけ真面目にそのクルマを作っているかの姿勢が大きな差を生んでいます。トヨタに関して言えばヴィッツとクラウンには価格差なりの格差が付けられていて、なんだかんだ言ってもゴ◯フはクラウンよりヴィッツに近い作りをしています(遮音材の量など)。ドイツ車ユーザーに言わせれば、日本のセダンは外界の音を徹底的に遮断しているので、逆に静かすぎて気味が悪いそうです。ドイツ人と日本人の文化的バックグラウンドも指摘されていて、ドイツ人エンジニアに「静音性」についての質問を繰り返しても意図が全く伝わらないというケースもあるのだとか。

  数年前まではそんなドイツ勢のセダンに市場を席巻されつつあったようですが、よっぽどのドイツブランドへの盲目的な憧れでも無い限りは、BMWやメルセデスのセダンに壊れるまでずっと乗っていたいとは思うことは少ないようです(ユーザーへのアンケートによると)。その一方でレジェンドやレガシィB4、アテンザは10年以上乗りたいというユーザーの割合が高いです。高性能なクルマを比較的手軽な価格で、しかもランニングコストも今のところは輸入車に比べれば相当に割安ですので、経済性を重視しつつ快適なクルマに長く乗っていたいと考えるユーザーからの支持を得るのは当然です。よって買い換えのサイクルは長くなるので、年度当たりの販売台数では輸入車の数字が多めに出ることもあるでしょう。もちろんクラウンやレクサスLSのように短期での買い換えが常態化している日本車もありますが・・・。

  ドイツ車が好きで乗っている人を否定するつもりなんてないですが、やはり自分の愛車とどう接するか?といった距離感によっては、日本とドイツの文化の違いからくる違和感がどうしても看過できない水準に達することがしばしばあると思います。部屋に飾っておく模型としてならばフェラーリでもランボルギーニでもM1エイブラムス戦車でもそれほど困ることはないですが、クルマを部屋の延長と考えるならば、衣・食・住といった生活に深く関わるものを、ドイツ文化に委ねたいとは思わないです。やはり日本文化に同化しきれていない舶来品は使いづらさを感じます。欧州製の家具に囲まれた生活に満足する人もいるでしょうけど、私にはどうも理解できません。リニューアルオープンしたホテルには「和モダン」と名付けられた部屋が用意されることが多いので、おそらく私のような人はかなり多くて、かなりの需要があるように思います。

  さてクルマに話を戻すと、バブル期に「赤坂サニー/六本木カローラ」と言われるほど親しまれて以来20年以上の歴史を持つメルセデスCクラスやBMW3シリーズならばある程度の親和感を感じますが、それでも日本人が作った日本車に比べればトータルで見た「良いクルマ」度は数段劣るように感じます。なにより日本人にとって愛着を感じるBMWとは3シリーズ(F30)ではなく、新たに登場した2シリーズクーペの方だったりするかもしれませんが・・・。

  ドイツ車には少々難がある・・・と嫌味を言うのが今回の目的ではなくて、日本メーカーは安易なドイツ車追従ではなく日本人が心から親しめる高品質なセダン作りを続けていくことがやはり大事だと思います。レクサスに関してはそもそもがアメリカ向けに作られたブランドで、それを逆輸入する形で日本に導入したのだから、もっと日本らしくという要求自体が筋違いかもしれません。そしてレクサスと同じようにセダン開発を北米基準にしている日産にも、さらに日本向けにあらゆる点で行き届いたセダンを期待するのは難しいのかもしれません。ホンダ・スバル・マツダに関しても日産と同様の経営方針ではあるようですが、日本で多くのセダンファンを持たないこの3メーカーとしては、トヨタ・日産そしてドイツ勢を相手に回して十分に魅力を発揮できるクルマ作りが必須です。


  そんな3メーカーの現在地を考えた上で、アテンザ・レガシィ・レジェンドを改めて見ると既存勢力を打ち破るポテンシャルを備えた「上質セダン」を手頃な価格(安くはないですけど)で提供したい!という戦略的意図が見えます。プロの評論家がこの3台について何と言おうとも、大きな声で絶賛したい素晴らしい出来です(各車については追々・・・)。現状で欲しいクルマ1〜3位がこの3台です。どれが1位か?はやや難しいですが、高級ブランドを圧倒するハイテクセダンが欲しければレジェンドで、ドライブフィールを求めるならアテンザ、そして最上級に安全な走行環境を欲するならばレジェンドですかね。デザインはどれも素晴らしいです!

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↓アテンザMC版が発売されました!BMW3やアウディA4との大胆比較です!