2015年1月31日土曜日

レジェンド・アテンザ・レガシィ 日本のセダン天晴れ!

  日本ではセダンが「乗用車の基本形」という立場で見られなくなって久しいです。昔は各メーカーからマーク2・クレスタ・チェイサー・ヴェロッサのように共通設計のいわゆる兄弟車がたくさん出ていましたが、最大手のトヨタを見ても4つの販売チャンネルからそれぞれ違う車名を冠したセダンが出てくるなんてことはなくなりました。またトヨタと日産が国内市場でセダンを重要視していたころは、両メーカーを代表するモデルがやたらと似通っていたのも完全に昔の話で、現行モデルのクラウンとフーガは遠くから見てもハッキリと違いが解ります。トヨタ以外のメーカーのセダンは全てグローバルモデルになっていて、特に高級モデルはドイツ車に負けないような力強いフロントマスクを持つものが増えています。

  トヨタのクラウンも今では完全に中国向けの主力セダンとして生まれ変わっていて、次期MCでは2Lターボ車の発売が噂されています。新たな主戦場となる中国では現地生産されるターボチャージャー搭載の欧州メーカー車が圧倒的な人気を誇っているようで、苦戦する日本メーカーも販売のてこ入れのために何らかの対応が迫られています。日本車と言えば静かなNAエンジンが海外でも高い評価をされてきましたが、中国市場は他のどの主要市場よりも小排気量ターボの人気が高いようです。もはやドイツ・フランスといった極めて合理的な経営をする国々のメーカーでは、中国でいかに稼ぐか?がメーカー存続のために必要で、メーカー群が徒党を組んでステマを展開し、ターボと小型SUVというブームを中国へ持ち込んだ格好です(どちらも儲かる!)。日本勢の勢いは完全に削がれてしまった結果、簡単にまとめるとスタイリッシュな小型SUV・小型セダンでホンダ・スズキ・マツダが勝負し、取り急ぎターボチャージャーを調達してプレミアムカーを売ろうとしているのがトヨタ(レクサス)と日産(インフィニティ)です。

  2Lターボ車なんて全く興味ない!という日本の生粋のセダンユーザーにとっては、中国市場の動向による利益のない影響が日本へと大きく及ぶのは由々しき事態といえます。ほんのつかの間かもしれませんが、そんな人々の溜飲を下げさせてくれるのが、マツダ・アテンザのMCとスバル・レガシィのFMC、そしてホンダ・レジェンドの日本市場復活です。レガシィとレジェンドに関しては北米市場で育まれた背景を持ちますが、ドイツ車のような2Lターボで即席の安っぽい乗り味が作られるのに比べれば、マツダ・スバル・ホンダ(未試乗)が中型・大型のセダンに用いるエンジンもどれも味わい深く、豊かな乗り味が楽しめます。

  やはりセダンは他のボディタイプではなかなか味わえない特別な乗り味を保持して初めて「一流」なんじゃないですかね・・・と生意気なことを言ってしまいますが、やはりゴ◯フと同程度の乗り味のセダンなんてとてもじゃないですが納得できません。現行のゴ◯フが発表されたときに、クラウンのような静音性とか言われてましたが、私の乗った限りでは車体からエンジンのマウントまでクラウンには遠く及んでいませんし、ゴ◯フGTIのボンネットを開けてみるとフードの裏についている遮音材の面積は、アテンザ、レガシィ、クラウンなどに使われているものよりも極端に小さかったです。「自家用車」誌の測定によるとクラウンとゴルフでは2段階くらい静音性のレベルが違ったそうです(もちろん現行クラウンが上です)

  ゴ◯フを作っている某ドイツメーカーはどうやらクラウンの知名度を利用した宣伝を日本のカーメディアに流布したようですが、日本車セダンのユーザーが乗り比べれば、そのステルスマーケティングにはかなりの誇張が含まれることにハッキリと気がつくレベルです。ゴ◯フはたしかにヴィッツやマーチに比べれば質感の良さが実感できますが、それを考えても相当に割高な日本価格が付けられています。クラウンと同じくらい!なんて現行同士で比べたならばとてもじゃないですがあり得ないです。BMW3やアウディA4の水準を追い越した先にクラウンのレベルがあるというのに・・・。余談ですが、ゴ◯フGTIに試乗したあと自分の国産セダンに乗って帰ったときに、改めて愛車の遮音性の高さに感動したほどです。

  確かに廉価なドイツ車にもれなく付いてくるターボチャージャーがウルサイ!なんてことはないのですが、あくまで静音性に関していえは、ドア周りのパッキンがどれくらい念入りに入っているかであるとか、エンジン周りの遮音材をどれだけ使っているかといった基本的な部分がそのクルマの「実力」に大きく関わっています。BW1シリーズのドア周りは見比べるとフィットやマーチ並みに貧弱だったりします。日本車がドイツ車がといった先端技術ではなく、そのメーカーがどれだけ真面目にそのクルマを作っているかの姿勢が大きな差を生んでいます。トヨタに関して言えばヴィッツとクラウンには価格差なりの格差が付けられていて、なんだかんだ言ってもゴ◯フはクラウンよりヴィッツに近い作りをしています(遮音材の量など)。ドイツ車ユーザーに言わせれば、日本のセダンは外界の音を徹底的に遮断しているので、逆に静かすぎて気味が悪いそうです。ドイツ人と日本人の文化的バックグラウンドも指摘されていて、ドイツ人エンジニアに「静音性」についての質問を繰り返しても意図が全く伝わらないというケースもあるのだとか。

  数年前まではそんなドイツ勢のセダンに市場を席巻されつつあったようですが、よっぽどのドイツブランドへの盲目的な憧れでも無い限りは、BMWやメルセデスのセダンに壊れるまでずっと乗っていたいとは思うことは少ないようです(ユーザーへのアンケートによると)。その一方でレジェンドやレガシィB4、アテンザは10年以上乗りたいというユーザーの割合が高いです。高性能なクルマを比較的手軽な価格で、しかもランニングコストも今のところは輸入車に比べれば相当に割安ですので、経済性を重視しつつ快適なクルマに長く乗っていたいと考えるユーザーからの支持を得るのは当然です。よって買い換えのサイクルは長くなるので、年度当たりの販売台数では輸入車の数字が多めに出ることもあるでしょう。もちろんクラウンやレクサスLSのように短期での買い換えが常態化している日本車もありますが・・・。

  ドイツ車が好きで乗っている人を否定するつもりなんてないですが、やはり自分の愛車とどう接するか?といった距離感によっては、日本とドイツの文化の違いからくる違和感がどうしても看過できない水準に達することがしばしばあると思います。部屋に飾っておく模型としてならばフェラーリでもランボルギーニでもM1エイブラムス戦車でもそれほど困ることはないですが、クルマを部屋の延長と考えるならば、衣・食・住といった生活に深く関わるものを、ドイツ文化に委ねたいとは思わないです。やはり日本文化に同化しきれていない舶来品は使いづらさを感じます。欧州製の家具に囲まれた生活に満足する人もいるでしょうけど、私にはどうも理解できません。リニューアルオープンしたホテルには「和モダン」と名付けられた部屋が用意されることが多いので、おそらく私のような人はかなり多くて、かなりの需要があるように思います。

  さてクルマに話を戻すと、バブル期に「赤坂サニー/六本木カローラ」と言われるほど親しまれて以来20年以上の歴史を持つメルセデスCクラスやBMW3シリーズならばある程度の親和感を感じますが、それでも日本人が作った日本車に比べればトータルで見た「良いクルマ」度は数段劣るように感じます。なにより日本人にとって愛着を感じるBMWとは3シリーズ(F30)ではなく、新たに登場した2シリーズクーペの方だったりするかもしれませんが・・・。

  ドイツ車には少々難がある・・・と嫌味を言うのが今回の目的ではなくて、日本メーカーは安易なドイツ車追従ではなく日本人が心から親しめる高品質なセダン作りを続けていくことがやはり大事だと思います。レクサスに関してはそもそもがアメリカ向けに作られたブランドで、それを逆輸入する形で日本に導入したのだから、もっと日本らしくという要求自体が筋違いかもしれません。そしてレクサスと同じようにセダン開発を北米基準にしている日産にも、さらに日本向けにあらゆる点で行き届いたセダンを期待するのは難しいのかもしれません。ホンダ・スバル・マツダに関しても日産と同様の経営方針ではあるようですが、日本で多くのセダンファンを持たないこの3メーカーとしては、トヨタ・日産そしてドイツ勢を相手に回して十分に魅力を発揮できるクルマ作りが必須です。


  そんな3メーカーの現在地を考えた上で、アテンザ・レガシィ・レジェンドを改めて見ると既存勢力を打ち破るポテンシャルを備えた「上質セダン」を手頃な価格(安くはないですけど)で提供したい!という戦略的意図が見えます。プロの評論家がこの3台について何と言おうとも、大きな声で絶賛したい素晴らしい出来です(各車については追々・・・)。現状で欲しいクルマ1〜3位がこの3台です。どれが1位か?はやや難しいですが、高級ブランドを圧倒するハイテクセダンが欲しければレジェンドで、ドライブフィールを求めるならアテンザ、そして最上級に安全な走行環境を欲するならばレジェンドですかね。デザインはどれも素晴らしいです!

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↓アテンザMC版が発売されました!BMW3やアウディA4との大胆比較です!