2014年8月6日水曜日

ジャガーXF と マセラティ・ギブリ に継承された系譜

  最近はセダンを語る評論家がかなり少なくなってしまった。セダンの新規車種はかなりのペースで発売されていて、その1台1台に各自動車雑誌からレビューが行われているが、セダン要員といえるライターが絶対的に足りない。確かに読んでる側(私)にも何かと問題があるのかもしれないけど、クラウン、レクサスIS、新型スカイラインに関しての評論は、どれ一つとして心に残るものではありませんでした。

  これは輸入車ブランドにおいても同じで、BMW4シリーズグランクーペ、マセラティ・ギブリそしてメルセデスSクラスも何だか「すっきりしない」ものが多い印象でした。いずれも良く知られたプレミアム・ブランドのクルマだからこその難しさもあるかと思いますが、そのクルマへの感動が素直に伝わってこないです。もしかしたら感動なんてしていないのかもしれないですが・・・。ライターの年齢層が高すぎるのでは?という疑念が湧きます。セダン=オッサン車というイメージのせいか、50~60歳代のライターが登用されています。しかし私が思うにこれらの高級セダンとは、「頑張ってこのクルマに乗ってやるぞ!」と人生にプラスに作用するモチベーションに価値があります。

  ここでちょっと難しい問題がありますが、現在発売されているクルマは今の高所得世代が買うためのものです。よって年配のライターを配置することは理にかなっているのですが、そこにはエコだのユーティリティだのといった「現実主義」に晒されて、正当に評価されない、高級セダンの悲しい現実ばかりが列挙されます。セダン好きとしては時に胸が引き裂かれる想いがして途中でページを閉じてしまうことも度々あります。

  そもそも高級セダンに急激な変化なんて要らないです。燃費や加速性能を重視すればするほどに、高級セダンの価値なんてどんどん危ういものになります。高級セダンを買う人の多くが最も強く意識していることは、燃費や加速性能よりももっともっと大切なこと、つまり「同乗者の安全」です。しかしこれらのデリケートな情報を雑誌媒体で書く事はタブーになってしまいます。SUVや軽自動車がいかに危険で死傷率が高いかについて書いたライターがいたら完全に干されるでしょう。

  しかし中には、年配のセダンユーザーにとって有益な情報を提供しつつ、若いセダン志望者に夢を与えつつ、セダンの良さを見事に描き出すという才能に溢れたライターもおられます。クルマに負けない「キャラ」がなにより大切と感じさせてくれるのが、西川淳という方です。各雑誌もこの人のただならぬ存在感はとても重要視しているようで、雑誌媒体では最高レベルの超売れっ子ライターです。youtubeなどでもインプレを多くこなしていて、「いやぁ〜やっぱええですねぇ〜」と京都訛りで語る姿は重みがあります。

  そんな西川さんがモーターマガジン誌で「ジャガーXF3.0」のレビューをしてました。まあある程度は「提灯記事」なんだろうなと思わされるのですが、その論点に大きな破綻はありませんし、読んでいて素直に「欲しい!」と・・・迂闊にも感じてしまいました。同じ雑誌で展開されている理論派で名高い木村好宏さんの「アルピナB4カブリオ」のインプレとは180度違いますね。木村さんはまるでポルシェのスポーツカーを語るようなテンションで捲し立ててくれますが、どうも「金持ち道楽」的な視点が鼻に付きます。アルピナってそんなにむりやりポルシェに比肩させなくてもいくらでも引き出しがありそうな印象なんですが・・・。

  そんなアルピナの半額ほどで買えてしまう「ジャガーXF3.0」はデビュー時こそ目立たない存在でしたが、今となってはメルセデスやBMWの6気筒モデルよりも明らかにお手軽で、しかも内外装の高級感においてもEや5を軽く上回ってしまう「逸品」と言えます。レクサスGSやフーガが買える日本ではなかなか「ベストバイ」まではまだまだ遠いかもしれませんが、その「保守的」な佇まいは「とてもいい」です。自動車がパワーユニットを中心に目まぐるしく変わり、改良としての「変化」ではなく、宣伝活動の一環としての「変化」も多分に含まれていて、表面的には多様化しているように見える現在の自動車業界では一層光り輝いています。

  VW(アウディ)やメルセデスがやたらと過大評価されてますが、この2つの自動車メーカーがこの20年間で成し遂げた事って一体何ですか?クルマは宣伝広告で売るものだ!という「商社」や「広告代理店」のメンタリティに迎合しただけじゃないですか?VWパサートやメルセデスCクラスなんて「肥大(最適)化したコンパクトカー」としての価値はあるかもしれないですが、「高級セダン」として憧れの対象になりえるクルマじゃないです。ジャガー、マセラティ、あとアルピナ。この3ブランドが「高級セダン」のブランドとして今後さらなる重要なポジションを占めてくることを期待したいです。

  
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