惜しまれつつも一昨年(2012年)に生産を終えたマツダの名車RX-8は、スポーツカーとしての専用プラットフォームを持ちつつ、そこから限りなくセダンとしての実用性を追求した「意欲作」でした。開発当時のマツダはアメリカ人社長の指揮のもと一丸となって、再建を目指していましたが、その切り札となったRX-8はいかにもアメリカ人らしい合理的な発想のクルマだったと思います。
従来の日本は伝統と格式を重んじる国民性で、合理的なイノベーション自体は日本が最も苦手とする分野だと言われています。高度経済成長期における驚異的な経済成長には、もちろん日本企業によるイノベーションがありましたが、これはむしろ例外的な事例であり、太平洋戦争で日本にあった「伝統」や「格式」が破壊され、日本全体がイノベーションを生み出し易い「確変」的な状況になっていたということが、本田宗一郎氏の自伝の中にも力強く記されていました。
オイルショック、バブル崩壊、リーマンショック。マツダにとっては「伝統」と「格式」が脆くも崩壊する瞬間が過去40年の中で3度ありました。そこで生まれたイノベーションは結果的にマツダをさらに高い地位へと引き上げているので、見事に「ピンチをチャンスに変える」ことに成功しています。そのイノベーションの中で5代目ファミリアが生まれ、RX-8・初代アテンザ・初代アクセラが生まれ、今また初代CX5と3代目アクセラが飛翔しています。でもって経営が安定している時は・・・ビ◯ンテみたいな摩訶不思議なデザインのクルマが出て来ちゃったりするのですが。
RX-8以外の名車はマツダの系譜として現行モデルの中に生きていますが、日本中を振り向かせたRX-8の「スポーツカーシャシーの4ドア」という画期的なコンセプトは、マツダの「プロパー」として残ることは出来ませんでした。そのアイディアを拾おうとしているのが、「マーケティングの鬼」といわれるトヨタです。クラウンやレクサスISとの区別が曖昧になってしまっているマークXのモデル廃止を受け、その受け皿となるモデルをつくるべく、86をベースとした4ドアセダンの開発が実際に行われているそうです。
「マーケティングの鬼」トヨタがスポーツカーベースの4ドアセダンにGOサインを出した真意とは何か? 欧州やオセアニア地域における「86」への反響は、発売当初より大きく、スポーツカー専用モデルを3万ユーロ以下で出したトヨタは「唯一無二」の存在だという高い評価を得た事が自信になっているといわれています。そしてメルセデスCLAのような廉価な4ドアクーペが世界の多くの地域で活躍していることから、中国や東南アジアなどの成長市場に投入する「プライベート・スペヤルティカー」として開発するのにタイムリーであることが最大の理由だと思われます。
輸入車ブランドならば確実に1000万越えするであろう、新型スカイラインHVが450万円で発売されても尚、「高い!」という声があるなど、高級セダンそのもののニーズの狭さが明らかになってきました。日産もスカイラインの下に初代プリメーラのようなお手頃でスタイリッシュなセダンを据えていくなど、将来的なスカイラインやフーガの見込み客を囲い込む方策をとらないことには、高級セダンの売上は維持できないと思われます。同じく新型シャシーを投入して意気込んだGSやISの受注が案外だったレクサスにしても、入門モデルの品薄感でメルセデスに再逆転を許す歯痒い展開です。ブランドの基幹モデル(LS、GS、IS)は非常にレベルが高いのですが、そこへ誘導する入門モデルのCTや新たに投入されるNXではやや役不足な感があります。
マークXの後継モデルがレクサスから発売されるとなると、それなりに風当たりが強そうで、トヨタとレクサスにそれぞれ用意した、ハリアーとNXのような関係に持っていくのではないかと思われます。いずれにせよトヨタが本気で着手するだけの理由は十分にありそうなモデルなので、多くの人々が満足するようなクルマとなって発売されることを期待して待ちたいと思います。エンジンはNX用の2Lターボになるのでしょうか?
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